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恒例行事〈フリー朗読台本〉


規約

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情報

〈概要〉
男子の一人称。モノローグ。
〈読み手の性別〉
不問
〈本文の文字数〉
676文字 
〈時間の目安〉
2分

本文

僕は静かにため息を吐きながら、この憂鬱な時間が早く終わるのを待っていた。
年に二度、盆と年末に行われる決まり事。
祖父の自宅に親戚一同が集まる恒例行事。
僕の両親、伯父夫婦と伯母夫婦。そして従兄たちがいつものように、祖父を囲む形でけたたましくずっと誰かが喋っている。
それが、ただただ煩わしかった。
声が大きいだけの、空っぽの言葉が飛び交う空間。
そこに居るだけで、どうにも窮屈で息苦しかったけど、僕はその場を離れる事も出来ずに、ずっと俯いた状態でその雑音を聞き流していた。
それが僕にとっての、ここでの恒例行事だった。
不意に自分の名前が呼ばれてドキッとする。
声の方に顔を向けると、祖父の視線が厳しく向けられていた。
またいつもの順番がきたのだと、息苦しさが一層増した。
ある程度のお決まりのやり取りが行われた後、これまたお決まりの様に祖父が僕たち孫の近況を聞いてくる。
伯父方の従兄から始まり、伯母方の従兄、そして最後が僕。
半年前と大して変わり映えのしない事を大袈裟に反応をしつつ、満足そうに決まった順番に聞いていき、そして少し間をわざと開けてから最後はいつも僕に話を向けてくる。
そして僕が話し始めれば、祖父の詰まらなそう盛大なため息と、それに合わせるような含み笑いが周囲から漂ってくるのもいつもの事。
さっきまで皆と同じように、けたたましかった両親もこの時だけは、いつも静かにその瞬間が過ぎるのを待っていた。
分かりやすいぐらいに感じている従兄たちと自分との差を、より実感する瞬間。
この憂鬱な恒例行事が早く終わればと、僕はまた誰にも気づかれないように小さくため息を吐いた。


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