持続可能なデジタル・ミュージアムとは(第7回):ごく簡単なまとめ
きょうは、2020年5月14日。多くの府県で特措法に基づく緊急事態宣言が解除されると報道されています。展示を再開するミュージアムも出てきたようです。いろいろと困難は多いことが予想されますが、まずはご同慶のいたりです。
ただ、今回の事態でよく見えるようになったのは、人が来ることに依存しているミュージアムの運営が今後いかに危ういか、だろうと思います。学校で習ったことばを使うならば、展覧会モノカルチャーとでも言えましょうか。必ずしも財政的な依存度の大きさを申し上げているわけではありません。ミュージアムのさまざまな活動が向かうゴールのおおかたが「館に人が来ること」に集中している運営の構造に問題がある、と言うべきでしょう。
情報通信技術の利用、という側面だけとりあげても、そのことは言えます。今、多くのミュージアムはウェブサイトを公開していますが、大半の館のコンテンツはリアル・ミュージアムの、それもフローとしての活動の告知です。こんな展覧会があります、こんなイベントがあります、場所はこちらです、交通手段はこうです、いつ開館しています、ぜひおいでください…、という内容に、ほとんどのページが費やされています。近年普及してきたSNSも、だいたい同じような傾向かと思われます。試みに今回のコロナ禍で「閉館中です」「展示は行っておりません」「イベントは中止になりました」になったページを数え上げてみるとよいでしょう。ウェブサイトが廃墟化するありさまが実感できます。
このように、画面デザインも美しく、更新もひんぱんで一見華やかなウェブサイトも、リアルな活動の投影である限りはリアル・ミュージアムの従属的な存在で、運命をともにしてしまいます。リアル・ミュージアムを閉じても、デジタル空間上で自立的に運営ができるしくみが、デジタル・ミュージアムであり、これからの時代に必須の存在になってゆきます。
なぜ「必須になってゆきます」と断言するかは長くなるので、ごめんなさい、つづきで。
*ヘッダ画像はColBaseより、辟邪絵 鍾馗(奈良国立博物館所蔵)