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目が見えない子の想像力

僕は子どもの描いた絵をアニメ化して上映するイベントの企画運営をしている。これまで実施してきた中で印象的な出来事がいくつかある。その一つが目の見えない女の子が参加した時のことだ。

ある施設で20人ほどの子どもが参加して自由なテーマで絵を描いてもらい、それをその場でアニメ化して上映を楽しむというイベントを開いた。その参加者の中に目の見えない10歳くらいの女の子がいた。その子は生まれつきの盲目ではなく、事故か病気かで視力を失っていた。だから何となく絵は描けたし色も理解していたので、周りの子どもにサポートしてもらいながら一生懸命絵を描いていた。
しかし絵を描けたとしても、それがスクリーン上で動いてアニメになっても見ることができない。残念だけどその子が上映を楽しむことはできないよなあ、と僕は思っていた。

上映会が始まり施設の壁に大きくアニメを投映すると、子ども達は自分たちの絵が動いていることに興奮して、絵に触れようと壁を叩いたり飛び跳ねたりして大はしゃぎした。そしてその中にその子も混じっていた。プロジェクターの光に包まれて、他の子どもと一緒に幸せそうな表情ではしゃいでいる姿を見て僕は驚いた。きっとその子の頭の中では自分の描いた絵、友達の描いた絵が動いて、とても素敵な世界が繰り広げられていたのだろう。

上映会の様子

子どもの想像力ってすごい!とその時感じた。絵を動かしてアニメにする映像技術には限界があるけど、想像力には限界がない。その子はアニメとは比べ物にならないような素晴らしい世界に包まれていたのかもしれないと考えると感動した。

あの子が大人になっても当時の想像力を忘れずに持ち続けていてほしいと願う。何か苦しいことがあっても、想像力さえあればきっとその人は人生を楽しく乗り越えて行くことができるはずだ、と僕はいつも信じている。


子どもの絵のアニメ画面


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