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Vol.4|約1年のペットロス中に動物看護を学び、気持ちの整理をつけようとしていた

天国の少し手前には「虹の橋」があると言われています。そこは、亡くなったペットたちが自分の飼い主と待ち合わせるための場所。

飼い主が自分のところに来るまで、ペットたちは楽しく遊びながら待っているそうです。

ここ「虹の橋こうさてん」は、そんな虹の橋をイメージし、お別れを経験した人、これからその時を迎える人のための情報交換の場です。

大切な家族とのお別れを経験した方へのインタビューをとおして、お別れまでの過ごし方や、お別れの仕方についてのさまざまな選択を発信していきます。

vol.4は、10年前に亡くなったココくん(仮名)のお話をお届けします。

犬種:ビーグル/男の子
享年:17歳

語り手:E.Oさん


使っていたケージを10年間保管する理由

ココくんが亡くなって10年経った今でも、ケージを大切に保管されているそうですね

両親は、「残しておく方が辛い」と犬小屋などを整理しました。でも、私は「取っておきたい」と思うタイプだったので、家族の中でも意見が分かれたんですよね。すべてを処分してしまうと、ココの存在を否定するような感じがするんです。10年も経ってるのに、っていう話ですけど。

ケージって、飼っていた子の形や大きさも把握できる物ですよね。ココは今いないけど、いた時の感覚を少しでも残せる物として保管しています。ケージは、私が以前使っていた部屋の中心に置いているのですが、家族は私の気持ちを考えて「処分しよう」と言わないでいてくれてます。

周囲をよく観察して、安心できる場所をわかっていたココくん。

子犬の頃は、とってもヤンチャでした。

最初に出会った時の印象は?

1番最初にココを見たのは、父だったんです。父が「ペットショップに可愛い子がいる。みんな(家族)を、その子に会わせたい」って。でも、私はまだその時、犬を飼うことにピンと来ていませんでした。周りに犬を飼ってる子もいなかったし、自分も子供だったので。はじめは「あ、犬か」というくらいの感覚でした。

ペットショップでココを見た時、すごく可愛かったのを覚えてます。ただ、大人しい感じの子でした。ぜんぜん鳴かなそうだったので、「この子大丈夫かな? なんか病気じゃないのかな?」って思ってたんです。

でも、家に連れて帰ってきた途端、さっきまでが嘘のように、段ボールやら、いろんな物をちぎりまくったんです。さっきまでのは演技だったのかなって(笑) 別の犬みたいだったって、家族全員が言ってました。

普段の生活では、どんな様子でしたか?

ものすごく活発で、いたずら好きで、気の強い子でした。当時は困ったことも多かったですが、今にして思えば全部、笑いに変わっています。

子犬の頃は、1人にされるのが嫌いでした。部屋にココだけ置いて、高いサークルに入れていたのに出てきていました。
成犬になっても、届くはずのない高い所に食べ物を置いていたのに、どういうわけか、取って食べていたんです。たぶん、自分で物を動かして、段を作ってたんでしょうね。用事が終わった後、ココのいる部屋に戻ると、物の位置がちょっと違っていたこともあります。当時は見守りカメラが無かったので見れませんでしたけど、もし付けていたら、ゴソゴソやってたところが見れたんじゃないかと思います。


たくさん一緒に走って、兄弟みたいに育った

いたずら好きの食いしん坊でした。ドッグフードの袋を破ったところ。

ドッグフードをものすごい勢いで食べたことがあったとか?

開けたばかりの10kgのドッグフードを、私がうっかりこぼしてしまったんです。そしたら、ココがものすごい勢いで食べてしまって。ドッグフードを元に戻すのと、食べるのとで競争でした(笑)
結局、袋の半分ぐらいは無くなってました。「向こう行け!」って言っても、遠くに散らばってるドッグフードを、ばーって走って取りに行っちゃったんですよ。食い意地はすごかったです。

小学生の頃は、散歩が大変だったんじゃないですか?

ビーグルって元は狩猟犬だから、体力があるんです。私がココを散歩していて、親が「先に帰るね」って車を走らせた時があったんですが、それを見た途端、ココがものすごい勢いで車を追いかけたんです! リードを引いている私からしたら、たまったもんじゃなかったですよ。
そういう感じで私が転んだ時でも、そのまま引きずっていこうとしてたんですよね。だから、「この子の散歩は1人じゃ無理だ」と子供ながらに思ってました。

でも、大変でしたけど、楽しかったです。私が小学生の頃から飼っていたのもあって、一緒に育った兄弟みたいな感覚でした。私は遊んでもらってるし、ココはたぶん「遊んでやってる」と思ってたでしょう。


1人で逝かせたくなかったから、仕事も休んでそばにいた

お気に入りのクッションは自分の物と認識していたので、家族が座ると取り合いに。

亡くなる前は、どのように過ごしていましたか?

亡くなる半年ほど前から、体を動かしづらそうにしていたんですが、寝たきりだったら筋肉が弱って歩けなくなると思ったので、目の前に餌を置いて、2、3歩だけ歩かせていました。毎日10分ぐらいですかね。食い意地のおかげで、なんとか動こうとしてくれました。

動き回ることが難しくなってからは、新しく買った荷台にココを乗せて、家の中や庭をぐるぐる回って気分転換してました。外の匂いも嗅ぎたいだろうと思って、4、5か月ぐらい続けたと思います。

亡くなった時は、どういう状況でしたか?

痙攣した時に「ちょっと、これは危ないかも」と思ったので、夜間診療に連れて行き、そこで「厳しいです」と言われました。
当時、私は社会人として働いていたのですが、亡くなる前後の1週間ほど仕事を休みました。社会人として本当はいけないと思ったのですが、覚悟しなきゃいけない状況だと感じたんです。ご飯やお風呂の時は目を離すこともありましたけど、できるだけ一緒にいたかったので、寝る時は隣で寝ました。

亡くなる瞬間は、看取ることができました。たぶん、私の目の前で逝ってくれたんだと思います。私がいないところで1人で逝かせたくないと思っていたので、それが私にとっては救いでした。最期は、眠るような感じでした。


子どもの頃から見守ってくれた愛犬に感謝の手紙を

ご飯をねだる時は、前脚をそろえて、とてもかわいい表情をしました。

最期のお別れはどういう形だったのでしょうか?

亡くなった後、1日ぐらい家にいて、お別れしました。ずっとお世話になっていた動物病院の先生からは、お花をいただきました。
翌日、ペット専用の火葬場に連れて行って、お葬式をしました。ココが好きだったパンや芋の他に、手紙も書いて棺に入れました。ココは読めないかもしれませんが、感謝の気持ちを書きました。棺に入れて、あまり時間が経たないうちに火葬しました。

飼い始めた当初は、兄弟みたいな存在でした。でも、気づいたら時々、お父さんみたいに見える時もあったんですよ。私が夜遅く帰ってきたら、「どこ行ってたんだ?」みたいな顔したり。だから、兄弟からお父さんに変わって、おじいちゃんに変わって…。
自分にとっての存在は年を経るごとに変わりましたけど、ずっと見守ってもらってたっていう感覚があったんですよね。

悲しい気持ちを誰かと共有しましたか?

家族の他には、本当に親しい人だけに話しました。ペットを飼ってる人だったら、わかってもらえる部分があるかもしれないけど、飼ったことがない人にとっては、ピンと来ないのかなと思ったから。飼った経験がない人に話すと、逆に自分が傷ついてしまいそうで。


何かできることがあったんじゃないかという気持ちから、動物看護の勉強を始めた

お別れした後は、どういう風に過ごしましたか?

気持ちの整理がずっとつかなくて、1年間ほどペットロス状態でした。自分の中で納得できなかったというか、「もっと自分にできることがあったんじゃないのかな?」って思ってました。
死因は病院で老衰と言われたんですけど、もともと耳が悪かったのと、太りすぎだったので、「本当にそれで片付けていいのだろうか?」「本当にそうなのかな?」と考えてしまったんです。

自分の中でもっと考えたい、より知りたい、という想いがあったので、お別れから1ヶ月くらい経った時に、通信教育の講座を取って動物看護師の勉強をしました。今更でしたけど、心の整理をつけたかったんですよね。

約1年間のペットロス状態から抜けられた、または気持ちが落ち着いたきっかけはありましたか?

きっかけは、正直なかったです。本当、時間ですね。徐々に徐々に。
動物看護の勉強をすると同時に、虚しさも感じました。他の元気なワンちゃんを見るのが辛いこともありました。それでも、自分の中で考える時間を持ちたかったんです。


お互いが快適に過ごすために、愛犬への適切な対処を知ることも大切

現在あるペットに対してのサービスで、利用したいものはありますか?

当時は知らなかったんですけど、老犬ホームを利用できたらよかったなと思います。老犬の面倒をみるときに、飼い主側の負担が、やっぱり少しはあるんですよね。
犬も年を取ったら、認知症みたいになって、夜に吠えたりして。夜中の2時、3時とかにしばらく吠えてたことがあって。自分も次の日に仕事があったので、体的にも辛いところがありました。
そういうところの対処法を知ってたら、家族にとっても少し楽になるし、うちの子にも、もっと適切に対処できたんじゃないかと思います。

今、ペットと一緒に過ごしている人にかけたい言葉はありますか?

ペットは大切な家族ですから、一緒に過ごせる今、1日1秒を大切にしてあげてほしいと思います。


〈おわりに〉

お話を聞かせていただいた時、17年間ともに生活し、成長を見守ってくれた愛犬ココくんに対する感謝の気持ちが、溢れるように伝わってきました。「もっと自分に何かしてあげられたのではないか」という想いから、動物看護の勉強に意識を向けたお話からは、ペットロスに対する気持ちの整理の付け方に、さまざまな形があるのだと気づかされました。お話を聞かせていただき、ありがとうございました。

(聞き手:イチノセイモコ/ライター)


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