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  私は、現在東京の世田谷区で小学校の教員をしています。それ以前は15年間保育士をしていた経歴があります。保育士から教師に転職した理由として、
先生になるという昔からの夢を叶えること。
そして、もう一つが、「小1プロブレムの解決」を図ることです。
保育士時代、小1プロブレムの問題を耳にする度に卒園児を送り出す側としてやるせない思いがあり、使命感といったら大げさかもしれませんが、保育士の経験を活かし、教師として、そういった問題を微力ながら解決していきたいという気持ちが大きくなっていきました。そして現在、小1プロブレム問題解決に当たり「挑戦」をしている最中です。第一回目の今回は、小1プロブレムの問題点や原因、保育園からのアプローチの仕方について考察します。

では、小1プロブレムとは何でしょうか?
文部科学省による定義は
小1プロブレムとは、幼稚園や保育園から小学校に上がったときに子どもたちが感じる様々なギャップのことです。
文部科学省が「小1プロブレム」という言葉を使っていることから「小1プロブレム」という言葉が定着しました。以前は「小1ギャップ」「小1ショック」などとも呼称されていました。

小一プロブレムの原因
小1プロブレムの原因とは、どんなものが挙げられるのでしょうか?

教育委員会が小1プロブレムの原因をどう考えているか、文部科学省がまとめた文書があるのでご紹介します。

出典 文部科学省 「幼児期の教育と小学校教育の接続について」
このアンケートは、全市町村の教育委員会を対象に東京学芸大学が平成20年度に行った調査結果を、文部科学省で抜粋したものです。
教育委員会のアンケートで多かった小1プロブレムの原因は以下の5つです。

1. 家庭におけるしつけが十分ではない
2. 児童が自分をコントロールする力が身についていない
3. 児童の自己中心的傾向が強いこと
4. 幼稚園、保育所が幼児を自由にさせすぎる
5. 授業についてこれない児童がいる

この結果を見てどう思われますか。特に1番多かった回答が「家庭に問題がある」ということです。学校の問題ではなく家庭の問題と考えるのは、責任転嫁とも捉えられかねません。
さらに、小1プロブレムが子どもに責任があるような回答も見られますが、6歳の子どもに自己責任というのは無理がありますし、自己中心的な子どもや勉強についてこれない子どもも当然毎年いるはずなので、このような子どもがいることが前提の教育プログラムが必要ですよね。

では、子どもがスムーズに小学校生活へ移行できるよう、入学までに保育園でできる主な対策を考えてみましょう。

①小学校と連携を図る
小1プロブレムの解消を目的とした取り組みとして、幼稚園や保育園と小学校が連携をとる、いわゆる「幼保小連携」の重要性です。
➁小学生と交流する機会を設ける
小学校入学前に、小学生が参加できる行事等を計画して保育園に招待し、園児と交わる機会を作る。
園児と小学生が交流できる場を設けることで、子どもが学校生活に馴染むきっかけになることに期待。
⓷教師と保育士との連携を図る
教師と保育士がいっしょに参加できる研究会などを開催し、指導者同士でコミュニケーションを図る機会を設ける。相互に意見を交換しながら、それぞれの現場について理解することができる。
④園児の成長記録を小学校へ送付する
保育園側から小学校へ記録を子どもの保育園での育ちを振り返り、発達の状況などをまとめて「保育所児童保育要録」に記入し小学校へ送付する。
子ども一人ひとりの成長記録を小学校と共有することで、子どもの入学後の生活や学びに活かすことができる。
⑤基本的生活習慣を身につけさせる
小学校へあがるまでに、日常生活の基本である「食事・睡眠・排泄・清潔・衣服の着脱」の5つの生活習慣の基礎を養う。
⑥時間を意識しながら生活できるようにする
小学校では、自分で時間を確認しながら行動する場面が多くなるため、保育園においても、「〇〇時になったらやめようね。」などと、時間を意識しながら活動する機会を増やす。
他にもアプローチカリキュラムの作成などが挙げられます。

最後に、私が保育士時代に実践していた小一プロブレム解決に向けての取り組み“挑戦”を少しご紹介します。

1 東京都の就学前教育プログラム、カリキュラムを読み漁り、幼保小との合同研修会に参加したり、就学前プログラムのモデル校の梅木小学校(北区)、第一日野小学校(品川区)に出向き資料を頂き、調べたりしていました。そして、現場で連続性を意識した保育の実践を取り組みました。

2 同じ小学校に就学する近隣の保育園との交流活動の企画。これは、交流活動を通し、顔見知りを増やし不安を和らげることに繋がります。また、園児が就学予定の小学校へ出向き、授業体験、運動会見学、一年生との交流など実施し、就学に対しての期待を高めました。

3 就学前教育カリキュラムを活用し、指導例を参考にして活動を計画したり、小学校接続とのつながりを意識して保育を見直すことなどを実践してきました。例として、スケジュールボードを利用し、活動、給食など区切りを分かりやすくし見通しを持てるようにしたり、保護者に対しては、保護者会で地域の校長先生を講師として招き、学校の実態や就学までに家庭でやってほしいことなどお話していただきました。

以上のように、幼稚園、保育園側から、小学校への接続に向けて、できることもたくさんあります。子どもたちが、保護者が安心して、そしてhappyな学校生活が送れるようにしていきたいですね。
次回は、小学校からのアプローチや私の挑戦についてご紹介します。


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