何のために,どうやって勉強するのか考える

【理科教育の現状】


 研究のためにまず行ったのは,理科教育の現状と課題が何か知ることでした。自分の思いも大切ですが,同時に生徒や先生方のためになるものになることが大切です。中学校理科の現状と課題を簡単にまとめます。

・PISAやTIMSSの国際調査の結果を見ると,日本の子どもの科学的リテラシーや基本的な知識の定着は世界の中でトップクラス。
・18歳から69歳を対象に理科の基本的な知識の定着を国際的に調べた「科学技術に関する意識調査(2001)」では,調査した16カ国中14位とワースト3位であった。
「科学技術に関する意識調査の問題例」
 ①光と音はどちらが速いか。
 ②ごく初期の人間は恐竜と同時代に生きていた。正か誤か。
 ③放射線に汚染された牛乳は沸騰させれば安心である。正か誤か。
 ④電子の大きさは原子の大きさよりも小さい。
  →二択でかなり基本的なレベルです。
・理科への興味や有用感を調べる意識調査では,国際平均に比べて非常に低い。

 つまり,テストの点数は取れるけど,理科への興味や有用感は低い。そして,大人になると学習したことを忘れてしまうという状況です。筑波大学の藤田教授は,今までの日本の学習を,「受験合格のためのキップ」に例えていました。つまり,移動するために必要だけど,目的地に着くと紙切れになる,勉強も高校・大学に入るための手段でその後の人生では使わないという捉えです。

【何のために勉強をするのか】


 非常にショックでした。朝からこんな話題ですみません。理科教師として,個人的には理科ほど面白くて意味のある学習はないと思っています。実験があって,生活体験を生かせて,身のまわりの不思議がどんどん解決していって,さらに新しい疑問出てきて…。しかし現実は違うみたいです。こんな現状を変えたくて微力でも自分に出来ることは何か考えるようになりました。それで今は現場から離れているので,研究に力を注いでいます。
 最近特に考えることは,「何のために勉強するのか」というそもそも論です。私だったら理科を学ぶことの意味は何かです。もちろん色んな考えがあるし,答えがない(答えだらけな)問いだと思います。でも現場に戻った時に,胸をはって理科のおもしろさや大切さを伝えられるようにこれからも考え続けたいと思います。

【どうやって勉強するのか】


 一方で,今は勉強することが仕事のような状態なので,どうやって勉強をするのかについては少しばかり詳しくなった気がします。それについて書きますので,少しでも参考になればと思います。

【百聞は一見に如かず】


 理科教師である私のモットーの一つです。教師の教え込みより,生徒の日常生活の原体験や実験や観察を通した驚きや疑問を大切にしたいです。受験で点数を取る技術より,疑問や気になったことを調べたり実験で確かめたりする子どもを育てたいです。「一を聞いて十を知った気になる」より,「一を見て十を予想し確かめる」人を育てたいし,自分もなりたいです。20代のときに仕事ばかりではなく,もっと色々なところに旅をして見たことがあるものを増やしておけばよかったと後悔しています。

【百見は一読に如かず】


 毎日子どもを見て,場面に応じてどういう関わりをするのがいいか考えてきました。試行錯誤しながらその時の最適解を自分の中で出して実践してきたつもりです。しかし,その時の自分の最適解は他の誰かがすでに挑戦していて,その成果と課題もすでに出ています。そのような過去の誰かの実践にふれることができるのが本です。恥ずかしながら30歳になって気付いたことです。

【百読は一聞に如かず】


 どんなに本を読んで知識を蓄えてもそれを使いこなせないと意味がありません。また,その情報は間違っているかもしれません。それを防ぐために,今ハマっていることは,学んだことや考えのアウトプットです。誰かに聞いてもらう。そうすれば,アドバイスをもらったりまた違う角度の考えを聞けたり足りないところを補足してもらえたり議論できたり…。良いことずくめです。それを今当たり前にできることが幸せです。

 というわけで,どうやって勉強するのかに対する私の答えとして,キーワードは「旅・本・人」です。今は研究ばかりで,完全に実践が足りておらず頭でっかちになっている感がありますが,また学校に戻ったときに子どもや先生方に少しでも還元できるよう勉強を続けます。

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