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 私は、現在東京の世田谷区で小学校の教員をしています。それ以前は15年間保育士をしていた経歴があります。保育士から教師に転職した理由として、
先生になるという昔からの夢を叶えること。
そして、もう一つが、「小1プロブレムの解決」を図ることです。
保育士時代、小1プロブレムの問題を耳にする度に卒園児を送り出す側としてやるせない思いがありました。使命感といったら大げさかもしれませんが、保育士の経験を活かし、教師として、そういった問題を微力ながら解決していきたいという気持ちが大きくなっていきました。そして現在、小1プロブレム問題解決に当たり「挑戦」をしている最中です。
第1回目は保育園・幼稚園側からのアプローチについて投稿しました。第2回目の今回は、小1プロブレムの問題点や原因、小学校からのアプローチの仕方について考察します。
1回目の投稿が気になる方は是非こちらをご覧ください!

「小1プロブレム」とは何でしょうか?

 前回の投稿でも書きましたが、小1プロブレムって一体何なのでしょうか。
「学級崩壊」は、思春期前の児童が、教師に反抗し、敵対的な言動や態度によって、学級経営が成り立たない状況を指します。一方、よく言われる「小1プロブレム」は小学校1年生が落ち着いて授業に臨むことができず、学習が成立しない状況です。しかし、私は少し乱暴な言い方になりますが、一年生が幼児期の姿のまま就学し、成長が少し遅れている状況(育ちそびれ)の問題だと考えます。学級未形成の状態で、子どもたちは、幼児のように我を通してみたり、勝手気ままに立ち歩いてみたり騒いだりして、教師を困らせ、自分を見てほしいという姿なのかとも考えるようになりました。

東京都での実態

 東京都の実施した「東京都公立小学校第一学年の児童の学校生活への適応状況にかかわる実態調査」によると都内の1300人あまりの校長23.9%が2008年度に勤務していた小学校で。1年生の不適応状況が発生しており、大まかにいって4校に1校の小学校で不適応状況が起きているという実態が分かりました。
また、その不適応状況が起きた原因で最も多かったのは「児童に耐性がついていない」ついで「児童に基本的な生活習慣が身についていない」「家庭の教育力の低下」でした。
この結果からは、家庭における子どもの生活や育ちの問題の関係も存在するのだと改めて感じています。

小1プロブレムの背景

 上記の実態を踏まえ、子どもたちの育ちの姿や小1プロブレムの起きる要因は2つあると考えています。
 1つ目は、小学校と保育園、幼稚園との接続の問題です。実際、学校側の立場になって小1プロブレムは「戸惑い」と「段差」の二つがキーになると感じています。戸惑いとは、小学校という新しい環境により、場所や先生が変わり、交友関係も変化していき子どもたちは期待よりも不安の方が大きくなっている子もいるのだと思います。段差については発達や学びは連続しているのにもかかわらず、保育園や小学校の間に学び方や生活が段差となっているのかと推測しています。

 2つ目は、「子育ての変化」と「子どもの育ちの変化」です。
子育ての変化や育ちの変化とは、核家族、地域社会の希薄化によって、主に母親が孤立化していることです。この核家族化はここ30,40年の間に問題になっています。それまで、人類が誕生してから、年千年も大家族で過ごし、地域で子どもたちを育てることをしてきました。よって、私たちの脳も、自分の周りに保護者がいて、兄弟がいて、祖父母や親戚がいて、異年齢の仲間がいて、近隣の住む大勢の人たちと関わることで脳(主に前頭葉)が発達するようになっています。しかし、現在の孤立化した状況では、自己抑制をつかさどる前頭葉の発達が遅れ、それが、子どもたちの耐性欠如やわがままな行動に繋がっているのかとも考えています。この原因が小1プロブレムの本質的な問題だと思っています。
話は逸れますが、前頭葉を発達させる上で、私は、「絵本の読み聞かせ」や「異年齢保育・交流」を推奨をしています。 

これからの挑戦と野望

 小1プロブレムを解決するためにこれからやりたいことがあります。
1 生活科の活動を基盤に、国語や図画工作などの関連を図り、合科的に授業を展開させていきます。これは幼児教育が遊びを中心に活動や学びが展開されています。そこで、総合的に学ぶ幼児教育の成果を生かすために具体的な体験を通して自律への基礎を養う生活科から学校生活への適応を進めていこうと考えたからです。

2 幼稚園や保育園の学びの形態を踏まえ、45分の授業を20分や15分程度のモジュールで時間割を柔軟に構成します(4月、5月)何よりも「学校は楽しい」「明日も学校へ行きたい」など学校生活に対する意欲と安心感を持てるようにスタートカリキュラムを工夫していきたいと思います。

3 大田区内や世田谷区にある保育園等の幼稚園や保育士の方々に現在取り組んでいることが学校でどのように生かされているか、どう繋がっているかなどお話する機会を頂き、普段の仕事に自信と誇りを持っていただきたいと思っています。また、その近隣にある小学校の連携を深められるよう私がパイプ役を担い小1プロブレムの問題に対し、微力ながら解決をしていきたいと考えています。

 このようなことは、担任一人で進めることは難しいので学校全体で取り組めるように連携を図っていくつもりです。

 以上のように、小1プロブレム解決に向けて、できることがたくさんあります。子どもたちが、保護者が安心して、そしてhappyな学校生活が送れるようにしていきたいですね。

参考文献 
瀧井宏臣『なぜ、子縁社会が求められるか』
ピーター・グレイ『遊びが学びに欠かせないわけ』

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