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小さなイタズラで小さな経済がまわったこと

わたしの子どもの頃、住んでいた社宅の周りにはたくさんの移動販売の車が来ていた。

豆腐屋、魚屋、ロバのパン屋、夜にはラーメン、夏にはわらび餅にアイスクリーム、秋には焼き芋…

移動販売の音楽が聴こえてくると、ワクワク心が踊った。

私たち社宅の悪ガキ集団のお小遣いでは移動販売は少し値段設定が高かった。「いいな〜」と思いつつもだいたいおやつを買うのは通称【上の店】【下の店】と呼んでいた駄菓子屋の30円程で買えるものだった。

ある日、その移動販売の中に、タコ焼きやが新しく仲間入りした。ちょっとやんちゃそうな若いにいちゃんだった。うちに来る頃はもう夕方近い時間。夕飯前に買おうとするママたちは当然おらず、あまり売れている感じが見られなかった。

そこに目をつけたのが、私たち悪ガキ集団‼︎

紙に「¥1000」と書いてタコ焼き屋のにいちゃんに持っていったのだ!

タコ焼き屋のにいちゃんは一瞬びっくりした様子だった。

明らかに広告の裏紙で、ニヤニヤした悪ガキ集団

矛盾しているが、今のわたしがにいちゃんの立場だったら怒鳴りつけて二度とその場所にはいかなかっただろう。

だがにいちゃんはニヤッと笑ってタコ焼きを容器に入れて、「はいよ」と渡してくれた。

私たちは悪びれもせず、「¥1000なんやから2個頂戴♪」と言ったが、さすがに「一箱だけや」と突っぱねられた。それでもにいちゃんの男前度は素晴らしいものだったと思う。

箱を開けるとちゃんと人数分の6個が入っていた。

実はこれは後日談があって、こどもたちが偽物のお金でタコ焼きを買ったのはすぐに親たちにバレた。(誰が言ったか、それとも食べているのを見られたのかは記憶が定かではない)親たちはタコ焼き屋に謝罪とお礼を兼ねて買いに行くこととなり、タコ焼き屋は、土曜日のお昼時に来るようになった。

タコ焼き屋はその後曜日と時間帯を変えたお陰もあってか、結構繁盛した。偽物の「¥1000」では2度と買えることはなかったが、それでもこどもたちにも人気のタコ焼きやとして、しばらく不動の地位を獲得したのだ。

にいちゃんの子どもたちのイタズラへの対応は子どもたちの食欲と遊びの満足を満たし(先行投資)、結果としてにいちゃん自身の懐を潤した(利益への変換)。

小さな世界の小さな経済がまわっただけだが、今でもにいちゃんの対応は素晴らしかったと思う。

まさに「大人の対応」だった。

あの頃は時代的に今より人との距離感が緩やかだったことや、地域性もあったのだろうが、すごく貴重な体験ができたと思う。

今また少しずつ経済や社会環境が変わりつつあるが、新しく変わってゆく先が緩やかでイタズラ心のある楽しいものであって欲しい。












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