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六七日に 焦る心と置いていかれる恐怖

今日は六七日(むなのか)
つまり1週間が六回目 42日目

時間が過ぎていくのが早すぎる
この時の流れについていけない

自分が崩れないよう
現実を受け入れよう
姿は見えなくても側にいることを感じよう

毎朝 そう念じながら線香の煙をみつめてきた


その反面
私の心の奥では葛藤している

時間が経つと、
ハナコがいない生活が普通となり
今 こんなにも失った痛みを感じているのに
その存在が、思い出が小さくなってしまうのではないか
大切なことを忘れていってしまうのではないか

モチモチしたハナコの肌 フワサラの毛並み
床から伝わるハナコの頭をかいている振動
おじさんのようなイビキ
抱くと肩に顎を載せてくる重み
シャンプー後にびしょ濡れで走り回る姿
一緒にベットで寝る時の体温と鼓動

覚えている感覚が薄れてしまうのではないか
まだまだ鮮明に覚えている

どんなに時がたっても
忘れない
そのことは先代の犬たちで知っている

だけど、その感覚は
やっぱり遠いものになってしまう

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今はまだ身近に感じていたい

今はまだどこかに迎えに行ったら、帰ってきてくれるように思える

今はまだこの部屋のどこかに隠れているだけだと思いたい


どんなに自分をなだめても
別のことに気を向けても
日が落ちかけていく頃に
現実は違うことに気づき始め
寝る前には
今が夢の中で、起きたらハナコに会える
そんな錯覚とともに眠りにつく


置いていかないで!
私も一緒にいく!

両親が別居し、父と暮らしていた時
1ヶ月に1度 バイト代が入ると
母と一緒に食事をしたり、買物をしたりした

またね
そう行って改札を入ったあと
母と私は別々のホームで 線路を挟んで向かい合う

電車にのった母が 窓越しにいつまでも
私に手を振る
走り出しても、まだ振っていた


なんでこんなこと思い出したんだろ
でも、あの時の痛みと同じように

「置いていかないで」

そう心が叫んでいる

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知っている
存在はなくならない
思い出も消えない
一緒に過ごした月日は確かにある

目に見えないだけだよ
ちゃんといるよ

人には声をかけてあげられても
自分自身は会いたくてたまらない


それでも時は過ぎていくよね
この痛みも薄れていくよね
涙も止まるよね

なにもかも
わかっているのに
なんども
経験したのに

心は焦り
置いていかれるようで怖い


そんな気持ちを反映したのか
どんよりした厚い雲に遮られた太陽を探した一日だった

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