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最後の食欲、最後の散歩

もっともっと前に
なぜ気付けなかったんだろう

毎日毎日一緒にいたのに
なぜ変化を感じられなかったんだろう


数日前からハナコの呼吸がおかしいかな~?
なんて思ってた

それなのに、すぐに獣医さんのところに連れて行ってあげなかった

食欲もあるし、散歩もいつも通りだったから
しばらくしたら治る
くらいにしか考えていなかった

去年の今日
朝から元気がない様子
ご飯あげても食べない
オヤツを目の前に差し出しても横を向く
大好きなお芋でも嫌がった

呼吸もゼイゼイ ハァハァと苦しそうにしている

「これは大変!」
やっと気づく

リードを持ってくると
いつもならブンブン振るシッポも動かない

うっすら冷や汗が出てきた
何か大変なことになっているんじゃないか…


獣医さんのところに駆け込んだ

 朝から何も食べないんです
 呼吸も苦しそうなんです

慌てて状況を説明している途中で
先生は一言

「まずはレントゲンとりますね」

ハナコを抱きかかえるのではなく
ゆっくりと歩かせてレントゲン室に入っていった


診察台の上で、ハナコに聴診器をあて
音を聞いていた先生が顔をあげて
私の顔をジッと見る

「説明をするので、こっちへ」
そう言って、ハナコの身体を写したレントゲンの前に

「ここがハナコちゃんの肺
 ほとんどが真っ白でしょ
 普通は黒いのに、白いということはここに水が溜まっちゃってるんだ
 溺れているみたいな状態なんだよ
 だから苦しいの」

私の頭が真っ白になる

「運動は控えて
 抱っこもしないように
 どうしても抱きかかえたい時は…」

肺を押さないように抱える方法を説明してくれている
だけど、私には先生の声が遠くから聞こえてくるような感じ

 ハナちゃん そんなに苦しかったのに
 今日まで我慢してたの?
 もっともっと早くに気づいてあげられなくて
 ごめんね
そんな気持ちで胸が締め付けられて、涙が落ちてくる

涙を流している私の足元で
朝から何も食べてないハナコは
猫用パウチのささみを、美味しそうに食べていた
もっと食べたいと、助手さんにお手をし続け
もう一袋出してもらっている

私は自分で食べている姿に望みがある気がしていたけど
これがハナコが自分で食べた最後の食事となったね

先生は口に出して言わなかったけど
『もう長くない』
そういう診断だったんだ

「なんでもいいから、好きなものあげていいよ
 犬用じゃなくても食べるなら」

「呼吸も楽になるかもしれないのは
 濃縮酸素のレンタルもあるけど…
 ゲージはうちのを貸してあげるから
 レンタルするなら、頼んであげるよ」

先生 治りますか?
ハナコ元気になりますか?

私は聞きたかった
これが一番聞きたかった

でも、聞けなかった
優しい先生の顔が
助手さんのハナコを見る目が
その答えを言っているようで
私は聞けなかった

家までの帰り道
ハナコはゆっくりと
休み休み歩いた

歩きたがっていた

それも最短距離ではなく
毎日行っている公園や、
窓越しに挨拶を交わすワンちゃんのいる家の前など
ハナコが家までの道を決めて帰ってきた

今考えると、ご挨拶してまわっていたんだろうな
これがハナコとの最後のお散歩となった

家の前には階段が数段ある
これを登っていくのは苦しいだろうと思った私は
そっと抱きかかえようとした
けど、とても嫌がる
 階段も最後まで登るんだ!
1段1段ゆっくりと時間をかけて、自力で登りきった

誰がなんといっても
これが最後なんて認めたくない私の横で

ハナコは一つ一つ思い残すことがないように
準備していたんだろうな

ハナコを守っているつもりだった
ハナコを助けているつもりだった
…ちがうね
ハナコに守られ、支えられ、助けられていたのは私だった

ありがとう

この言葉しかない
悔やまれることは山のようにある
謝りたいことだって数え切れないほどある

でも去年のハナコの立派な姿を思い出し
今日ハナコが選んだ道を歩き
あんなにも苦しいのに登りきった階段に腰掛けて
2021年1月20日の出来事を体験しなおした一日

ハナちゃん
1年経っちゃった
早かったね、でも長かった
とにかく1年頑張ってきたよ

逢いたいな また逢いたいよ


今日も一日ありがとう


***
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