モヤモヤを抱えて空き家を売る

初めて相続放棄後の相続財産管理人に選任され、空き家の処分を任されたときにまず思ったのは、「誰に売るか」だった。

債権者がいるなら配当原資を確保するために「高く売る」が基本方針。

では、債権者がいない場合は?

「早く売る」が一つの目標ではある。

時間が経てば経つほど空き家は傷み、売れなくなる。
相続財産から除雪費用等を出し続ければ枯渇する。
そうなる前に売却を。

でも、それだけでいいのだろうか?
それが、疑問だった。

相続放棄される空き家は、同じように空き家が散在する地域にあることが多い。売れないから空き家になり、売れそうにないから相続放棄される。
そういう地域は道路が狭かったり、土地の形状が使いづらかったり、インフラが古かったり、近くに商店がなかったり、売れないなりの理由がある。
空き家が増えるたび、周辺環境は悪化し、負のスパイラルに陥る。

そんな地域にポツポツと点在する空き家を、手当たり次第に「買ってくれる人」に売って行った先にどんな街が生まれるのだろうか?
街並みは?道路は?インフラは?住民同士の関係は?
そこは次の世代が「住みたい場所」と思える場所なのだろうか?

「1人でも2人でも住んでくれる人がいれば状況は少しずつ改善するはず。」「人が増えれば、住人同士で手を取り合って街の状況をよくしていけるはずだ。」「そもそも買ってくれる人が少ないんだから、買ってくれるだけで御の字。」
そう言い聞かせて売却はするものの、モヤモヤはずっと消えないままだ。

国はランドバンク事業を進めようとしている。

「その地域を『住みたい場所』に変える」ことをゴールに据えて
「いつ売るか」「誰に売るか」「どのようにして売るか」を考える。
必要なら区画整理をする。
道路を拡張する。
土地の所有権の交換で土地を集約する。
商店、病院など必要な施設を誘致する。
それができるようになるまでは土地の状態でプールする。
プールしている人(団体)の固定資産税負担を無くす。

そういうことができるようにはランドバンク事業が発展する必要がある。

でも、まだまだ遠い道のりだろう。

それまでは、やはり「誰に売るか」はモヤモヤのまま抱えていくことになるんだろう。遠い将来のランドバンク事業の足かせにならないような売却先を探そうと心がけはするけれど、相続財産管理人にできることは僅かだ。




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