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Interview / 【耀アカルさん】

2020年の第18回新潟県障害者芸術文化祭~ふくらむアートふあっとにいがたフェスティバル~に、新しく「アール・ブリュット賞」ができました。
その初めてのアール・ブリュット賞を受賞された作者をご紹介します。
取材:2021年6月

[Interview]
耀アカル(ようあかる)さん 1993年生まれ
耀さんお母さま
[話しを聞く人]
角地智史、渡邉弥生(新潟県アール・ブリュット・サポート・センター)

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第18回新潟県障害者芸術文化祭 アール・ブリュット受賞作品「自創作の主人公」

 今回の公募出品のきっかけは、同居するご家族が公募のことを知り、耀さんに伝えました。
 作品は、手で持てるくらいの20cm程度の人形です。自作の型紙をもとに、フェルトなどを材料に手縫いし、制作しています。イメージに合う色の素材が見つからない場合は、自ら染めて素材から用意されるこだわりよう。これまで制作した100体近い作品の多くは、自身が好きなゲームやアニメのキャラクターを再現したものです。文化祭への応募は、実は別の人形で出品する予定でした。ですが、ゲームのキャラクターということで著作権にふれるのではないかと心配されたご家族が制作会社に問合せたところ、良い回答ではなかったため、出品を断念されたとのこと。1年以上制作にかかったそうで、とても残念だったと話してくださいました。今回の受賞作品は、耀さんオリジナルの人形となりました。
 どの人形もクオリティがとても高く、細部まで忠実に作られていて、ゲームの世界観とキャラクターへの愛を感じます。

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創作をはじめ、技術をつけた学生時代、人形へのこだわり

 中学時代に学校の家庭科の時間に裁縫を習い、簡単なマスコットを作り始めました。高校生の頃に人間関係がきっかけで辛い時期があり、「見返したい」という強い思いから創作に没頭するようになりました。
 その後、学校の先生の勧めでアビリンピック(全国障害者技能競技大会)に出場することとなり、制限時間内にエプロンを縫製する競技のために高校2年生の夏休みのほとんどを練習に費やしました。先生からマンツーマンで裁縫の厳しい指導を受け、高校3年生時の大会では入賞しメダルを獲得。先生から熱血指導を受けたことについて、お母さんは「本人に自信をつけさせ、ものづくりの喜びを教えたかったのではないでしょうか」と振り返っていました。

 人形の大きさは、ストラップの付いた5cmほどから、高さ30cmほどの重量感のあるものまで多岐にわたります。制作を始めた中学生の頃から、制作歴が長くなるにつれて再現の度合いは忠実になっています。最近では、1つの人形にかけた時間が10か月におよぶことがありました。制作のたびに試行錯誤と工夫を重ね、フェルトを2枚重ねにして丈夫さを出したり、綿の詰め具合を調節し立体感を持たせるなどして、1つの作品にかける時間が増えています。創り始めた頃から比べると、現在は、自分自身が求める作品のクオリティがとても高くなってしまったそうで、気軽に作っていた中学生時代について「あの頃はよかった」と話していました。

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ご家族から見た、耀さんの創作活動

 集中して制作している時は少しピリピリしていることもありますが、「根を詰めて制作してるんだなぁ」と思い、作品が作り上げられるとホッとしますとのこと。失敗してもやり遂げる姿や、細部にこだわって作り上げる姿には家族一同感心していると話します。耀さんのきょうだいに姉2人、兄1人がおり、同居する2番目の姉とはゲームやアニメの話、作品制作についても話し合うことが多いそうです。
 次回作は、お姉さんがオリジナルの物語を作り、そこに登場するキャラクターを耀さんが創作し、共同で制作を行う構想を温めているそうです。今後創られる作品が楽しみです。

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約100体の人形たち。後ろ姿、特に髪型の作りにとてもこだわりを感じました。

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