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Interview /【情報資格試験さん 前編】

※この記事は2019年度の当センター発行の事業報告書「語りと語り直し」に掲載したものを改編しています。

上越アール・ブリュット公募展は2019年10月26 日~29日に開催されました。

ここで、「斬られるリアクション」と「資格でもがく」二つの作品を応募し、入選した情報資格試験さん。訪問調査と展覧会後のヒアリングを通して、上越アール・ブリュット公募展がどのような機会であったのかふりかえります。


[訪問調査でのヒアリング 2019年9月6日]

ー この公募展自体に応募しようと思った経緯について教えて下さい。

「市役所の福祉課で用を終えてロビーで色々と考えた時に、あの、病院帰りとかで苦しい状態だったんですが、いろんな展示物資料がある中で、パッと目にとまったんです。自分には”認めて欲しい”とか”承認欲求”みたいなのがあるので、自分がやってきたことについて伝えられる場が、もしかしたらこれなのかもしれないと思って、ちょっとチャレンジしてみようかなと思いました。」

応募作品①「斬られるリアクション」 作り手・語り手:情報資格試験

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斬りたい。そう思って活動するも、「障害者だし」「万が一、何かあったとき責任が」と暗喩され、まわる役は斬られ役ばかり。ただ斬られてわかることがある。”斬られてあげないと、 斬ったことにならない”。斬られるリアクションがあって成立し、斬られないと不成立。 このパントマイムの様な世界、ときに鮮やかに散り、ときに目立たずに退く。血しぶきを あげずに色んな惨劇をあらわす。影が強くなれば光も強くなり、結果、主役が引き立つのだ。

ー ものだけではなく語りが必要な公募の形はどうでしたか?

「語りがあることで、表現したいことというのは、実はこうなんですよと説明出来る。私がやってきた殺陣・チャンバラだと、主役がかっこよく、主役が勝ってよかったね、となると思うんです。そうじゃない役にもスポットライトを当てると、こういう世界があったりするかもよっていう。そういう表現を自分はしたいんだなっていうことに、だんだんと気づいていきました。」

「斬られ役が頑張ってるから、(斬る役が)かっこよく見えるんだよっていう。何て言うか、その悔しさだったりとか、主役がいいなーとかいう羨望であったり、いろんな感情がない混ぜだと思うんですが。そういったところも、実はこうだっていうことで表現できれば、報われるって言い方は変ですけれど(笑)」


応募作品②「資格でもがく」 作り手・語り手:情報資格試験

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人生の途中から障害者になった者は、健常者とどうやって張り合うか、認めてもらうかというのに、第3者が認める資格を考えた。健常者と同じ土俵の上で合格率を戦いあう。たとえ合格したとしても、他人からの評価を自分の価値に置いている時点で、常に安心はないし自分の評価は自分でするものと分かっていても、認知欲求は収まらない。障害者の懸命さを見る感動ポルノと見てもよし、うちの会社の人材としてほしいというヘッドハントの目で見てもよし。どれだけ資格を取得しても直接的に何か生きていけるわけではないのですが、それでも、もがきながら次々と資格取得している、というところです。

ー “資格でもがく”についても教えてください

「あのー、精神的なところがあるので、いろんなプログラムを受けて。例えばどういう風に考えればいいよーとか。知恵としてルールを理解していたり、テクニックとして持っていたりはするんですけれども。わかっているけれども、現実そうはならないなっていうところがあるんですね。」

「やっぱり誰かから認められて、ようやっと安心したり嬉しかったりって言うとところもあって。でもそれって本当に心から喜んでるのかなとか。自分はそれででいいのかなっていう懐疑的なところもあったり。」

「焦点と言うか、どこに価値を置いてるのか常にふらふらしてる。そのふらふらさ、不安定さを書いてみた。その逆に不安定さを利用して、いろんな資格に挑戦して資格を取っていったっていうことでもあります。けれど、それを取ったから、合格した瞬間はやった!というよりは良かったあっていう。ほっとするというか、(言葉を探しながら)…ほっとする…でしょうね。ほっとした…それもほんと一瞬だけで」

「次、またどうしよう、ここから。引っ張ってた紐がパッとなくなって、次に何をつかんだらいいのかなみたいな。ある種この公募展へも、資格取得の一つとして応募しました。」


[公募展の中での出来事 2019年10月26 日~29日]
”斬られるリアクション” パフォーマンス / 資格でもがく 展示

たて

 公募展当日、パフォーマンスを行うスペースには、情報資格試験さんがこれまで取得した資格の束、”資格でもがく”の展示とともに、応募用紙の文章を抜粋した垂れ幕を吊るし、小さな舞台を演出しました。
 “斬られるリアクション”ではまず情報資格試験さんによって観客との間に麻ひもで線が引かれます。そして、この線を境に動作の意味が変わってしまう、との説明があります。次に観客が、お題の書かれた名札から気になったものを1つ選びます。そのお題に沿った何気ない日常の動作を観客が行うことによって、情報資格試験さんは派手に斬られ倒れてしまいます。例えば、「ぶどう狩り」というお題では、観客がぶどうを収穫する動作によって、情報資格試験の首が落ちて絶命してしまう、そんなパフォーマンスでした。会期中の4日間、1時間おきに10分間、1日7回、計28回のパフォーマンスを行いました。会場にはうめき声と笑いが響きました。

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ー 後半に続きます・・・・


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