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Interview /【情報資格試験さん 後編】

※この記事は2019年度の当センター発行の事業報告書「語りと語り直し」に掲載したものを改編しています。前編はこちら↓


[上越アール・ブリュット公募展 終了後のヒアリング 2020年2月22日]

情報資格試験さんと本展アートディレクターの角地が、公募展についてふりかえりを行いました。

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角地:
公募展をふりかえってどうでしたか?

情報資格試験:
公募展を経て、障害者ですということをオープンするようになりました。また、絵を描くようになりネット上、SNSで発信するようになりました。ポツポツと障害者的な目線ではこういうことを思っているということを発信したりもしています。新しい自分とまでは言い切れないけれど、新しいチャンネル、一面が開かれたのかなという感じはしています。

情報資格試験:
認められたい、自分を満たしたいという欲を原動力に、資格試験も継続してやっているつもりなんですけれども、障害者ですという発信を始めてみると、それはそれで欲が満たされているところがあって、二足のわらじが少し難しくなってきました。

『自分が障害者です』とアピールしても良いなと、だんだんそういう気持ちになってきて、色々考えて、ヘルプマークを身に着けるようになりました。有事とか災害とかめちゃくちゃなことがあった時に、どういう薬飲んでるとかいつも障害なんですよということをやっぱり周りの方に周知しておかないと皆さんに迷惑かけてしまうと思ったんです。

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角地:
出展前は資格取得後の気持ちとして、パッと紐を離されてしまう、だから次々と資格取得する、カルマに落ちていくよう感覚があると言われていますが、今回の公募展ではそのような感じはありますか?

情報資格試験:
多分そこまで行っていないかなと。まだ入門者だからこそその境地まで入っていないと言うか、その資格試験の場合は横にも縦にも広がるところがあって気持ちが上がったり下がったりしていたと思います。表現の場合もカルマ的な部分はあるのかもしれないとは思いますが、今は分からないですね。

角地:
これは私が表現に対して思ってることですが、表現を資格取得的に使っていくこともできると思うんですね、次々と公募展に応募して金賞を狙っていくとか。ただ、表現の特性として思うのは、評価がはっきりしない、その場のその場で異なるということがあると思います。資格試験は合否がはっきりしていて、そのための練習方法というのもはっきりある。けれども、それがカルマに落ちていくことにもなる。情報資格試験さんは今回、そんな苦しんでいる私そのものを表現しました、これはもしかしたらカルマに落ちにくい表現なのではないかと思いました。例えば公募展も一つしかなければ、受け手はそれに合わせて表現を変えていかねばならず、時に苦しくなっていく気がします。様々な面白がり方、評価軸のある場が複数あることが大切な気がしています。

もの、と語りを、集める形について

角地:
「ものと語り」という公募展を通して、企画のねらいとして支援員や家族、当事者の方が語り手となることで、普段の行為や関係を少しずらして自分たち自身を捉えられる機会になることを期待していたところがあります。
今回の情報資格試験さんの応募用紙を見ると、「もの(作品)」については作者本人が”私は、”というように書かれていましたが、「語り」の部分では自分のことを、”彼は、”とか”当人は、”というように、別人として書いていました。それはどのような気持ちからですか?

情報資格試験:
客観視したいという気持ちがあったのかもしれません。ただ随分前なので覚えていませんが、ただ例文として作り手と語り手に分かれていたので、それに倣う形で書いたのかもしれません。

角地:
公募展を通して自分のことを俯瞰して語っていたと感じました。改めてお話を聞いて思ったのは、情報資格試験さんは普段から自分のことを、めちゃくちゃ客観視してるタイプですよね。これまでは自分を俯瞰しして語ることはあったんですか?

情報資格試験:
それはもちろん、病院ではカウンセラーさんであるとかドクターさん、支援員の方にもそのように話をしていたりしました。そういう方のお力添えがあって、カラクリがあるということが見えてきて、なんとか生きているのかなというところがあります。

あとがき
ふりかえりを通して、情報資格試験さんは自分のことを俯瞰的に捉え、語る術をケアの現場を通して身につけていたことがわかりました。それを踏まえてみると、彼にとって今回の機会は、どう語るかではなく誰に語るか、語りの対象が変わったことが大きな違いだったのだとわかりました。ケアの現場の外の人、観客に向けて自己を語ること。それが障害を見つめ直すことにつながった。もしかしたらケアの現場にも観客が必要なのかもしれないと思いました。

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