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東浩紀「訂正する力」~迷走するリベラリスト?

 哲学者 東浩紀さんの新著 「訂正する力」。哲学するには「時事」と「理論」と「実存」の三つが必要と述べ、それを著書の骨組みとしている。本書の重要な点はここだと感じた。詳細は三章の冒頭に説明されている。

 著者の「訂正可能性の哲学」の実践編の位置づけだそうだ。

 読み進めて感じるのは一人のリベラリストの苦悩だった。ジャパンの未来を憂いている様子は伝わるが、過去を否定せず「訂正」しながら進むというアイデアを読むにつれて「これって、保守思想では?」と感じずにはいられなかった。使っている言葉が違うだけだ。

 結局、ぐるりと回って東浩紀さんは保守に目覚めたのだと感じた。

 たまたま横に置いてあった、中野剛志「没落する日本」幻冬舎、2018 にはリベラルの崩壊、西洋の自殺について書かれていたが、東浩紀さんの苦悩・迷走はこれと軌を一にしているのだろうと思った。世界的なリベラリズムの瓦解の余波を受けているのだ。

 併読していた掛谷英樹「学者の正義」扶桑社、2023では「リベラリズムはポストモダンを経て唯我主義に至り、自分が思ったことが真実で正しいというカルトになった」という主旨のことを書いていた。

https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594096038

 会社を経営し「実存」について学んだ東浩紀さんは、狂ってしまったリベラリズムに苦悩しているのではなかろうか?そして、その救いをリベラルと保守の中間に求めようとしているのかもしれない。これは自身を訂正する旅なのか?


日本の危機を広く知ってもらうため日々noteで投稿しています。あわせて日本復活に必要と考えている新しい技術・産業についても書いています。