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【相振り】里見流△4五銀について【向かい飛車対三間飛車】

今回は里見香奈女流がタイトル戦で採用した、相振り三間飛車△4五銀について考えていきます。△4五銀の狙いや攻め筋に関しては以下の記事が勉強になります。

△4五銀は里見女流がタイトル戦で採用したことから広まったと個人的に認識していますが、その前から西田拓也五段が奨励会三段時代に採用していたようです。

1.△4五銀の狙い

△4五銀の手の意味は「飛車の横利きを通しつつ、銀で圧迫して先手の駒組みを制限する」といったところでしょうか。プロの実戦例を見ていきます。

1.1. 一局目

第44期岡田美術館杯女流名人戦 五番勝負 第1局 里見香奈女流名人 対 伊藤沙恵女流二段より

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第1図は先手が4四の銀を△4五銀と出た局面。
第1図以下の指し手
▲4八金上 △1四歩 ▲2八銀 △5二金左 ▲1六歩 △3三角 ▲7五歩
 △1五歩 ▲同 歩 △同 香 ▲1七歩 △1三桂(第2図

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後手は△1四歩~△3三角~△1五歩と開戦し、△1三桂と桂馬を活用しました。以下実戦は▲2六歩に△2四歩~△2五歩と突いて後手が勝利しています。

1.2. 二局目

第44期岡田美術館杯女流名人戦 五番勝負 第3局 里見香奈女流名人 対 伊藤沙恵女流二段より

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第3図は先手が4四の銀を△4五銀と出た局面。
第3図以下の指し手
▲7五歩 △8四飛 ▲同 飛 △同 歩(第4図

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先手が飛車先の歩を切っているので飛車ぶつけが発生しました。第4図はお互いに一段金が生きており、ソフト的には先手が良いようだが難しい将棋です。

1.3. 三局目

第11期マイナビ女子オープン 挑戦者決定戦 岩根忍女流三段 対 西山朋佳奨励会三段より

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第5図以下の指し手
▲3八玉 △4四角 ▲4八金上 △3三桂 ▲9五歩 △1五歩 ▲7五歩(第6図

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先手はじっくり駒組みを進めていきますが、後手は美濃囲いの堅陣を生かして仕掛けます。

第6図以下の指し手
△1六歩 ▲同 歩 △2五桂(第7図

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自然に端攻めで後手が先行する形になりました。先手も▲7四歩から反撃しますが、△3六歩▲同歩△7四歩以下後手が勝利しています。

1.4. 四局目

第4期叡王戦段位別予選五段戦 ▲石井健太郎五段VS△都成竜馬五段戦(リンク切れ)より

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第8図以下の指し手
▲4八金上 △4四角 ▲2八銀 △3三桂 ▲7五歩 △1四歩(第9図

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以下あらきっぺさんのブログより引用致します。

先手はここまで自然な手を積み重ねてきましたが、ここに来て、妙に指し手が難しくなっています。
後手の端攻めのほうが明らかに速いので、ここで▲9六歩と突く気は起きないですね。

第9図で▲1六歩は△1五歩▲同歩△2五桂(第10図)で後手ペース。

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また、第9図で

▲5六歩→▲6八角→▲4六歩という手順で、4五の銀を撤退させれば話は旨いのですが、▲5六歩を突くと、△3六歩▲同歩△5六銀(第11図)という捌きを誘発します。

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また、第9図から▲6五歩で角を使いにいくのは、△7七角成▲同桂△3六歩▲同歩△5五角(第12図)がうるさい攻めになります。


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第12図以下、①▲8七飛は△2五桂、②▲6八角は△3六飛でいずれも後手ペースです。

2.先手の対策

第32期女流王位戦五番勝負 第1局 山根ことみ女流二段対里見香奈女流王位
第1期ヒューリック杯白玲戦F組 島井咲緒里女流二段対石本さくら女流二段
第32期女流王位戦五番勝負 第3局 山根ことみ女流二段対里見香奈女流王位
の三局で、同一の対策が指されています。

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第13図以下の指し手
▲8四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8三歩 ▲8五飛(第14図

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8筋の歩を交換した後▲8五飛と引くのが△4五銀を許さない指し方。以下後手は△5四歩~△5五歩から△4五銀の進出を狙います。対戦成績は先手の0勝3敗と奮いませんが、局面自体は互角で有力だと思います。

女流棋士は振り飛車党が多いこともあり、相振り飛車に関しては男性棋戦以上に研究開発が進んでいるようにも感じます。今後の動向に期待です。

里見流の指し方は下記書籍に紹介されています。


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