親愛なるあなたへ Ⅰ


これは僕の物語だ。


ゲームや小説でよく聞くフレーズ。

このフレーズが出てくる物語は

名作が多い。


この物語が名作になるかどうかは分からない。

でも、これは、正真正銘


僕の物語だ。




〜〜第1章〜〜

はぁ〜〜。

仕事の帰り道、高架橋から行き交う車を見ながら

ぼんやりと呟いた。


新潟か。


もう何度目の引越しになるだろう。

数えるのも嫌になるくらいだ。

でも今までの引越しとは訳が違う。

静岡から新潟だ。

今まで行った事も無い。

イメージでは一年の大半、雪が降っている。

何より、また1から人間関係を作らなければならない。


もう、辞めてしまいたい。

そんな弱音をLINEで親父にこぼす。

でも、そんな事を無計画にやってどうなるんだ。

やってみてどうしても無理なら、帰ってこい。

・・・・・帰る・・・・・うーん。。。


僕の実家はかなりの田舎だ。

村人約100人。

小学校の同級生、4人。

これでも小学校の中で一番同級生が多かった。

最寄りのコンビニまでは、車で山を降って約20分くらいだろうか。

年に数回帰る分には最高の場所だが

就職後、それなりの街で過ごしてきた僕には

少し不安が残る。


よし。

ちょっとした決意をして

新潟に行く事を決めた。

人付き合いが得意ではない僕は

初めから人付き合い悪く、いや

人付き合いが悪く見えるように振る舞うことにした。

別に無視をしたり、冷たい態度を取るわけではない。

飲み会が苦手、大勢が苦手、団体行動が苦手

決して嘘ではない。

周りに無理に合わせない。

肌が合わなければそれはその時考えよう。

またほぼゼロからのスタートだ。


ある夏の日に引っ越し。

想像より暑い。

イメージと違う。

とりあえず引越し、役所関係の事を終えて

いよいよ新しい職場へ。

そこには当然知らない人だらけ。

そもそも人見知りの僕は

それなりに思い描いていた自分を

素で演じていた。


新潟は都会といえば都会だが

とにかくデカい。

今までは電車で事が足りていた。

でも車があった方が絶対いい。

人生で初めて自分で車を買った。


実はこの年、一つハマったものがある。

御朱印である。

人によって神社だけの御朱印を集めている人もいれば

神社、お寺両方の御朱印を集めている人もいる。

僕の場合は、神社だけを集めている。

一応言っておくが、偏見などがある訳ではない。

将来的にはお寺の御朱印も頂ければと思っている。


とにかく、せっかく新潟に来たからには

行けるところには行ってみたい。

新潟にいつまでいるかも分からない。

そうして休日に神社を巡り始めた。

毎回行ける訳ではないが

神社巡りが熱を帯び始めた矢先

季節はいよいよ秋から冬に移った。


それは県外から来た僕の

想像通りの雪だった。

車が埋まるくらいの雪。

朝駐車場を雪かきしないと仕事が始まらない。

後々わかった事だが、新潟市内では

かなり珍しい量の積雪量だったらしい。

僕にとっては面倒だった反面、若干楽しかった。

だが、そんな積雪がある道を運転など

僕には出来なかった。

買ったはいいものの、しばらくは

車で遠出ができない日々だった。

年が明け、あまり行ったことのなかった

初詣も多少日程をずらして行った。

そしてまた、いつもの日常に戻っていった。



僕の記憶が正しければ、冬を過ぎたある日

彼女に明確にアプローチをする事になる。




そう、これは僕の日常の物語ではない。


これは僕の、恋の物語だ。


〜〜続く〜〜




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