「春香」「唐人お吉」〜高木東六のオペラ その①

今回演奏する高木東六の作品は標題の二作品。

まず「春香」ですが、これは18世紀李氏朝鮮時代に生まれた物語、韓国朝鮮人なら誰もが知っている、貴族と庶民の身分を超えたハッピーエンドの恋愛物語です。

高木東六は朝鮮半島の音楽が好きだったようで、旅行に行くとそのメロディーを採譜していたそうです。このオペラの他にも、管弦楽曲「朝鮮舞踊組曲」なども作曲しています。
朝鮮が日本の植民地だった時代、お互いの文化が今より近かったに違いないでしょう。

昭和十三年(1938年)頃、村山知義・演出の『春香伝』を築地小劇場で見て、オペラ的な要素があると思い、演出者にオペラの台本の作成を依頼に行ったそうです。
順調に三幕まで書き上げたところで空襲に遭い、楽譜も燃えてしまい、作曲はそこでストップ。その後疎開先の伊那で、在日朝鮮人連盟から依頼を受け、昭和23年(1958年)、有楽町座で初演を迎えました。

その後、朝鮮戦争の勃発、半島の分断などの情勢の悪化により、暫くオペラ上演には至らなかったようで、再び日の目を見たのは2002年の日韓ワールドカップの折でした。文化交流事業の一つとして上演されましたが、御歳98才、なんと恵まれた人生を生きた方なのでしょう!

こちら、青島広志氏所蔵の「春香」のヴォーカルスコアです。

次回は「唐人お吉」について書きます。

※下記のリンク先を参照して記事を書きました。

https://www.yurindo.co.jp/static/yurin/back/413_1.html

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