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地球にやさしい消火器

高橋弘行

「日本の英語を考える会」の活動に賛同し、アソシエイトメンバーに入れていただいています。日本の英語の「モヤモヤ」をみなさんと一緒に考えていきたいと思っています。
 
先日、北関東の某駅構内のそば屋でこんな消火器をみつけました。ん?地球にやさしい消火器?いろんな点がモヤモヤしました。

地球にやさしい Earth environment friendly
この消火器は、地球温暖化防止に対応するために窒素ガス(N₂)による加圧方式を採用しています。 This fire extinguisher is pressurized by nitrogen gas, to keep protection from global warming.

英文法的にもいろいろと問題があるでしょうが(例えばenvironment がenvironmentally でない点とか)、この表示に関して一番モヤモヤしたのは、「一体何を伝えたかったのですか」という点です。
消火器の表示ですから、外国人に読んでもらうべきはやはり「使用法」。それが随分下の方に、それも小さく書いてあります(「使用法」がOPERATIONとあるのはDIRECTIONSでは?)。
そして一回読んだだけではよく分からない「地球温暖化から保護するために窒素ガスが充填されています」という言葉が上に来ています(ということは、これを一番伝えたかったということですね)。
うーん。
日本の英語表示にはこういった類の「個々の英訳はそう間違ってないんだけど、全部つなげると意味不明」というのがあまりにも多いと感じます。それは逐語訳にこだわるあまり、本来その英語を示すことで、「誰に」「何を」「どう理解してもらいたくて」訳しているのか、ということが置き去りにされているからだと思います。つまり生身の人間が訳しているのに機械翻訳みたいな結果が生じるといいますか(もっとも、今や機械翻訳も相当レベルアップしていますから、「日本人の訳と一緒にしないでくれ」とAI(人工知能)の側から言われてしまうかもしれませんが)。
この消火器の例も、日本語の逐語訳から一旦離れて、「外国人が緊急時に戸惑わずに使用でき、かつ二酸化炭素を使っていないので環境にも配慮している優れた消火器である」ことを紹介する、その観点から英語を考えれば、もっともっと簡単な英語で、抜群の宣伝効果を得られる表示にいくらでもなるはずです。もったいない。そんなことを考えながら、そばをすすったのでした。

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