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【2023Word】I'm wearing (pants)…!

楠田倫子

今年印象に残った英語表現を振り返るシリーズ。今回は「Don't worry, I'm wearing (pants)…!」をお届けします。

お笑い芸人のとにかく明るい安村さんが持ちネタの「安心してください、履いてますよ!」をイギリスの人気オーディション番組「Britain's Got Talent」で披露したところ大ウケ。日本国内でも大きな話題になり、今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」Top 10 にランクインしました。 

「安心してください、履いてますよ!」が日本で大ブレイクしたのは2015年のこと。もうだいぶ前のこのネタが、なぜ、今、しかも海外でそれほど話題になったのでしょうか? 

ネタそのものの完成度の高さや国境を超える面白さはもちろんなのだと思いますが、" I'm wearing " という安村さんのキメ台詞に対して、聴衆が思わず " Pants!"と答える「コール&レスポンス」状態が生まれたことが非常に大きかったと思われます。審査員や聴衆も巻き込んで会場全体が大盛り上がりだった様子が、当日の映像からもうかがわれます。(動画こちら → Britain's Got Talent公式YouTube

この「コール&レスポンス」、実は狙って起こしたものではなかったそうです。日本語の「履いてますよ」を" I'm wearing "と英語に直訳しただけで深い意図はなかった。ところが英語の wear は他動詞、つまり必ず目的語を伴わねばならない単語なので、ネイティブの聴衆からすると反射的に
目的語(Pants!)を補いたくなるような、とても不完全で座りの悪い構文。そこで思わず安村⇔聴衆が呼応しあう一体感が創り出された、というわけなのです。

英語の他動詞・自動詞の識別は日本語にはないもので、英語学習者にとっては悩みの種。よく起こしがちな間違いとして知られているものには、たとえば以下のようなものがあります。

■私たちはその問題について議論した
正 We discussed the issue
誤 We discussed about the issue
日本語では「について」を伴うので、その部分をaboutと直訳してしまいたくなりますが、discussは他動詞なので直接目的語を取り、前置詞aboutは不要です。

■その電車は東京駅に到着した
正 The train arrived at Tokyo Station
誤    The train arrived Tokyo Station
arrive は自動詞なので前置詞at を伴いますが、似たような意味でreachを使う場合、reachは他動詞なので直接目的語を取ります(つまり例文のケースだとThe train reached Tokyo Stationとなります)。

今回の安村現象(?!)から、目的語を伴わない他動詞は、ネイティブスピーカーにとってはとっさにPants! と叫びたくなるくらいおさまりの悪いものなのだな、ということを再認識しました。

品詞の区別はネイティブでない学習者にとっては本当に厄介。筆者もいまだにてこずっています。文例やリアルな会話にたくさん触れて身体にしみこませて覚えるしかないのかな、と思いますが、どなたかよい学習法をご存じの方がいたらぜひコメント欄でご教示ください!

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