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霊魂と肉体(10) -魂魄の働用と幽中の交渉- ●

#00632 2020.1.2

  これにて天神の神霊が降りて人の魂に入りて恩頼(みたまのふゆ)を蒙らしむると云ふ事も、又その反対に根国底国より禍神の荒び疎び来りて人々の魄に交こりて禍事を為さしむると云ふ事もある本因(もとのいわれ)はよく解った事と思ひます。

 これに就き今その証に引くべき一話があります。それは、昔支那の宋の代に光孝安禅師と申す禅僧がありて清泰寺と云ふに住み、この禅僧は有徳の人にて既に六神通も得て居たと見えて、或る時堂内にて坐禅し定(じょう)に入りて、彼の六神通の内なる神境通とて、蘆舎(ろしゃ)を出でずして予め未来の事を知り、情身室中に居ながら又よく墻(かき)を隔てゝ物を見ると云ふ境界に至り、肉眼に非ざる心眼にて冥々の中を観透(みとお)して居りますと、二人の弟子僧が堂前の高欄に凭(よ)りかゝりて何か話をして居ります。

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