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『本朝神仙記伝』の研究(68) -羽黒山千三仙人- ●
#00450 2016.12.16
羽黒山千三(せんざ)仙人は何氏なるを知らず。その名は千三郎、父は弥助、母の名、詳らかならず、陸奥国北上三本木(さんぼんぎ)の人なり。始め弥助、男子二人あり、兄を喜之助と呼び、弟を千三郎と称す。
家貧にして二人を養育すること能(あた)はず、千三郎を伯楽の家に遣はしけるに、ある日帰り来りて、「己は伯楽を業(わざ)として世を渡らむこと好ましからねば、外(ほか)の業に就かむことを許し給へ」と云へるを、弥助聞きも入れず、「一度人の家に行きたる者の帰ると云ふことやある、片時も我が家に置くことならず、疾(と)く行け」と息巻き云ひければ、千三郎は「否や」の返答もせず、打ち萎(しお)れて何処ともなく出失せけり。この時、千三郎は十三歳にてありけるとぞ。
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