『本朝神仙記伝』の研究(72) -甲斐徳本- ●
#00454 2017.1.9
甲斐徳本(かいのとくほん)は、その姓は永田氏なり。その父母及び生国を知らず。伊豆、武蔵の間を行き廻り、薬籠を負ひて、「甲斐の徳本一服十六銭」と呼びて薬を売り歩く。
江戸に在りける時、徳川秀忠公病あり、典薬(てんやく)の諸医、手を尽くせども験(しるし)無かりけるに、誰が申しけむ、徳本を召して治療を為さしむ。不日にして平癒したり。
こゝに於て秀忠公の喜悦一方(ひとかた)ならず、賞を遣はすべしとて種々の物を与へられけれども、敢へて受けず、唯例の一服十六銭に限る薬料をのみ申し下したりければ、人皆その精白を称し合へり。
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