見出し画像

『幽界物語』の研究(43) -幽界の禍物- ●

#00273 2014.1.14

参澤先生「お前は狐が化けたものを見たことはあるか。また、人間に病を与える疫鬼などについて知らないか。」
幸安「私が赤山より師仙に同行して井口村という所に行った時に、川の真ん中に田のある所があり、その地に狐が二、三匹いました。私に、しばらく人間の旅人のように歩いてみてくれと申しましたのでそのように致したところ、あちこちと連れまわって誑(たぶら)かそうとしたため、捕らえて投げ倒し、以後、人にこのようなことをするなと云ったところ、皆平伏して本体を現し、立ち去りました。
 また、このほど若山(和歌山)の湊東長町の田中某の親類の女一人が発狂の病で療治に参ったところ、憑物(つきもの)が体に見えました。赤山で伺った鬼病に違いないため、師命を以て私が疫鬼の住む境へ行って糺(ただ)したところ、疑わしい奴がいました。そこでこのような所行をするなと厳しく叱りつけたところ、その後病人は全快して常体になりました。」

ここから先は

2,770字
この記事のみ ¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?