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『異境備忘録』の研究(34) -山人の霊徳- ●

#00349 2015.4.15

「天狗界にて雨を祈るは山人と云ひて、人間より入りたる天狗主掌の何坊、何僧正等云ふ類の祈る時は、高名なる淵の側に座して、水柱と唱へて手を一つ拍(う)ち、龍柱と唱へて一つ拍ち、次に印を結び、高靇(たかおかみ)、闇靇(くらおかみ)、水靇、火靇ノ神、天水分(あめのみまくり)、国水分(くにのみくまり)、○○○、○○○、男龍、女龍、河伯、海伯、鳴雷、水雷、火雷、男女風伯、雨師(うし)、水元伯ノ諸神と唱へ、次に天ニ水アリ、地ニ火アリ、火ハ水ニ依リテ燃エ、水ハ火ニ依リテ動ク、風コレガ導キタリ、四龍ハ四方ヨリ集リ、二風東西ヨリ来リ、二雷上下ヨリ合シ、河伯川ヨリ起コリ、海伯海ヨリ通ズ、諸霊コヽニ集ヒテ水脉ヲ開ク、靇ノ荒魂(あらみたま)謹ミテ雨ヲ願フ、サンザンヒラリと唱へ、空を向きて、天御柱(あめのみはしら)、国御柱(くにのみはしら)、水分ノ二霊と唱ふれば、忽(たちま)ち淵に浪(なみ)逆立ち、風俄(にわ)かに生じて黒雲忽ち起こり、水は玉になりて上り、大空に棒の如く上り、雲先八方に乱れてそれより雨降るなり。
 この時、手を二つ拍(う)ちて再拝して、後へ三足下がりてその所を立ち退くなり。これは人民の為にすると云へり。右の咒言は定文言なり。」(『異境備忘録』)

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