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天地組織之原理(160) -綿津見大神の御神徳- ●

#00919 2024.9.19

「こゝを以て備(つぶさ)に海神(わたのかみ)の教へし言(こと)の如くその鉤を与へたまひき。故、それより以後(のち)は稍愈(やや)に貧しくなりて、更に荒き心を起こして迫(せ)め来る時は塩盈珠(しおみつたま)を出して溺らし、それ愁(うれ)へ請(こ)へば塩乾珠(しおふるたま)を出して救ひ、かく惚(なや)まし苦しめたまふ時に稽首(のみ)白さく、僕(あ)は今より以後、汝命(いましみこと)の昼夜の守護人(まもりびと)となりて仕へ奉らむとまおしたまひき。故、今に至るまでその溺れし時の種々(くさぐさ)の態(わざ)、絶へず仕へ奉るなり。」
 
 この伝は火遠理命、海宮より帰り給ひて海神の教への如く詛(のろ)ひてその鉤を兄命に与へ給ひしに、海神の言の如くそれより後は兄命は貧しくなりたるによりて、更に荒き心を起こして攻め来る時には彼(か)の海神より賜りたる塩盈珠を出して溺らしめ、又愁ふる時には塩乾珠を出してこれを救ひ、かくして悩まし苦しめ給ふにより、兄命も火遠理命の御徳(みいつ)には及ばざるを知りて終に稽首して曰く、僕は今より以後、汝命の為に昼夜の守護人となりて仕へ奉らんと誓ひ給ふに至りたるにより、それより後は臣位に降り給ひて今に至るまでその溺れし時の種々の態を為して絶へず仕へ奉るとなり。これ則ち薩摩の隼人の祖(みおや)にしてこの子孫、世々天皇命(すめらみこと)の宮の傍らを離れず守護人となりて、この時水に溺れたる種々の態を俳優し仕へ奉る事と定まりたりとなり。
 さてこれにて海宮の伝は講じ終りたれば、これより海神の御神徳のことを研究するは余(よ)が一家講義の本旨なれば、聊(いささ)かその御神徳の大なることを講じ置くべし。

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