天地組織之原理(137) -神教に習ふべし- ●
#00896 2024.5.4
前々より講じ来りたるを以て、大国主大神の御大徳且つ御神業の大なることは御了解ありし事と存す。就てはこれより高皇産霊大神の顕幽の両政を皇孫命(すめみまのみこと)と大国主大神に任じ給へる御神勅によりて、大神の八十隅手(やそくまで)則ち幽界(かくりよ)に隠れ給ひし後は如何なる御神徳たらん。又顕事(あらわごと)幽事(かくりごと)とは如何なることならんと云ふことを講究すべきなり。
然るにこの講究は本居先哲の『古事記伝』に起こりて平田先哲深く考へられ、『古史伝』中殊更に心を用ひ意を注ぎて講じ置かれたることなれば、この平田先哲の説を挙げて参考に供す。
「既に天地立ちて所謂(いわゆる)造化の道行はれ、寒暑昼夜の来往経て年をなし、風火金水土の幸ひもほどほど備はり、人草万物の生ひ成りて草木も生ひ茂り、雨降り風吹き海川野山のことまでも某々(それぞれ)に掌(し)ろしめす神ありて、世にある神事(かみごと)の限りは掌漏せること無きに、産巣日大神(みむすびのおおかみ)の勅命(おおみこと)以て大国主神に治(し)らせと詔(のたま)へる神事幽事と云ふは如何なる事を云ふならんと考ふるに、所謂造化の道に係る神事には非ずて、国津神は更なり天津神も国土に祝へる、又世に有らゆる人のこの世を過ぎて幽世(かくりよ)に帰りたらん魂等を、この時まで猶未だ主宰(しり)治むる大神を定め給はざりし故に、その幽冥事(かくりごと)の大権(おおこと)を執りて悉(ことごと)く統治(すべおさ)めよとの勅命にて、大造(おおみたから)の功(いさおし)を成し給へる賞(めで)の賜物にぞ有りける。それは『日本書紀』に本(もと)より幽事と書かれたるにて明らけし。
故、こゝに大国主神は本より須佐之男大神の宇都志国玉神(うつしくのたまのかみ)と詔り給へる御教へに依りて、その事を心に含みて、前(さき)に八十隅手に隠りて侍らんと白し給へる事にしあれば、速やかに吾は退きて幽冥事を治らさむと白し給へるなりけり。」
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