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天地組織之原理(127) -空中の幽界- ●

#00886 2024.3.5

 或る人又問ふ、只今の御弁明にて下照比売神の哭く声天に到れることは疑団氷解し、これを他に及ぼして大に吾神典を研究すべきものと存す。就てはこの時天降りたる天若日子が父及び妻子は申すまでもなく天津国にての妻子なるべく、又下照比売は無論この国にての妻なるべければ然もありしならんと存すれども、こゝにその父・妻子が天降り来て喪屋を作るとあるを、『日本書紀』正書には「天稚彦が妻・下照姫、哭き泣(いさ)ち悲哀(かなし)みて声、天に達(きこ)ゆ。この時、天国玉(あまつくにたま)その哭く声を聞きて、則ち天稚彦の已(すで)に死(みうせ)たることを知りて、乃ち疾風(はやち)を遣はして尸(かばね)を挙げて天に到らしむ。便(すなわ)ち喪屋を作りて殯(もがり)す云々」とあり。
 これを以て考ふるに『古事記』の伝にてはその父及び妻子天より降り来て喪屋を作るとあれば、両書の伝「天」と「地」との違ひあり。何れをか正伝とすべきものなりや。

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