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戸籍時報連載『旧市区町村を訪ねて』13「桜島と暮らす」鹿児島県鹿児島市〜桜島町〜(文・写真:仁科勝介)

こんにちは。コンテンツビジネス推進部のMです。弊社刊行「戸籍時報」との好評連動企画、「旧市区町村を訪ねて」。
いつもたくさんの「スキ」をありがとうございます💛
今回は、令和6年5月号掲載の第13回。鹿児島県の桜島町が舞台です。桜島の火山活動の歴史や麓に暮らす人々の暮らしへ想いを馳せた記事となっています。
いつものとおり、仁科さんの素敵なお写真をここではカラーでご紹介しています。
今後の連載も、ぜひお楽しみに!

~~本連載の著者は、写真家の仁科勝介さん。2018年3月から2020年1月にかけて、全国1741の市区町村を巡った彼が、2023年4月から再び、愛車のスーパーカブで日本中を旅しています。
 今回の旅のテーマは、1999年に始まった平成の大合併前の旧市区町村を巡ること。いま一つのまちになっているところに、もともとは別の文化や暮らしがあった。いまも残る旧市区町村のよさや面影を探します。
 仁科さんの写真と言葉から、今そこにある暮らしに少し触れてもらえたら嬉しいなと思います。~~

『桜島と暮らす』

鹿児島市の繁華街「天文館」からスーパーカブで移動すること10分,桜島フェリーの発着所に着いた。なんといっても24時間運航という驚きのフェリーだが,自動車航送の運賃も手頃であり,長く人々の暮らしを支えてきたのだと感じられる。早朝,時刻表も見ないままに発着所へやって来たものの,運良く待たずに乗船できた。

鹿児島港から桜島港までは約15分の船旅だ。体感時間ではもっと短く感じられた。乗船客は,デッキで風を浴びたり名物のうどんを食べたり,思い思いに時間を過ごしていて,見ていて楽しい。そして,桜島の島影が近づいてきた。

鹿児島市というイメージが強い桜島も,2004年までは島の北西部が旧桜島町として存在していた(島といっても,1914年に発生した大正大噴火によって,大隅半島と陸続きになっている)。桜島港へ到着し,旧桜島町役場の方向へ進んでいくと,垂水方面へ進む国道とは反対側なので,すれ違う車の多くが地元車であり,静かな桜島の暮らしが感じられた。住宅地も広がっていながら,見上げれば猛々しい桜島がそこにいる。鹿児島市街地から見る桜島とは迫力が違った。

湯之平展望所という観光地にも訪れた。桜島の山肌を間近で眺めることができ,錦江湾と鹿児島市街地も一望できる。そこに,桜島の誕生や歴史について紹介された看板があり,読んでみると,「桜島はまだ新しい火山なのだなあ」と思った。
約2万6千年前に起こった噴火で誕生したのが,桜島だという。

▲ 旧桜島町から見上げた桜島。鹿児島市街地で見るよりも迫力があった。

もちろん,約2万6千年前も大昔だとはいえるが,雲仙火山の誕生は約50万年前,富士山の誕生は約10万年前で,それよりもずっと新しい。1914年に桜島で起きた大正大噴火は,国内における20世紀最大の噴火だ。それも,たった110年前の出来事である。長い地球史の中では身近な歴史であり,人間と桜島が共生し,影響し合っていることも最近のことなのだなあと感じられた。

だから,地元の方々からすれば普通のことかもしれないが,桜島の麓で今も暮らしが続いていることは,印象深かった。
桜島は噴煙によって,生きていることを日常的に実感する火山だ。そうした人間のコントロールできるものを超えた存在が,目の前に存在しているのだ。同じ土地に立ってみて,あらためて桜島も自分も「生きている」のだと実感した。大地も人間も,常に今を生きているのだと。
それは当たり前のことなのだろうが,それでも,そう実感できることは,とてもありがたいと感じられたのだった。

(かつお╱Katsusuke Nishina)



仁科勝介(にしなかつすけ)
写真家。1996年岡山県生まれ、広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年春より旧市町村を周る旅に出る。
HP https://katsusukenishina.com/
X(旧Twitter)/Instagram @katsuo247



本内容は、月刊『戸籍時報』令和6年5月号 vol.853に掲載されたものです。

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