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みんなの日本語の注意点と教えるときのももこ的極意!

こんにちは【日本語教師になる】ももこです。

この動画は、日本語の教科書「みんなの日本語」を、教える人のための動画です。特に、日本語教師養成講座420時間で模擬授業に臨んでいる方や、採用面接用の模擬授業を控えている方、採用されていよいよ授業を行っていこうとしている方におすすめの動画です。動画視聴後に、適切な教案・教材を作る知識を得ている状態を目指します。

今回は、「みんなの日本語の注意点と教えるときのももこ的極意!」についてお話しします。

前回の動画で、緑シリーズでどんなことをするか、そして、教材分析の対象にする日本語の教科書「みんなの日本語」の概要についてお話ししました。もし、まだご覧になっていない場合は、前回の動画「みんなの日本語 教材分析動画のオリエンテーション 」からご覧ください。

今回は
緑シリーズ「みんなの日本語・教材分析」を始めるにあたって、

・「みんなの日本語」の3つの注意点と、
・初級の学習者に対する「ももこ的3つの極意」

についてお話しします。

「みんなの日本語」3つの注意点

注意点⒈ Can-do(学習目標)が見えにくい。

普段、私たちが何かについて話をするとき、「話したいことの内容・テーマを決めてから」文章を考えます。「この文型・文法を使うぞ!」と思って話をするわけではありません。しかし、みんなの日本語は構造シラバスであることから、テーマとなる文型・文法とその文型・文法を使った文章が課ごとに集められています。「この文型・文法を使うぞ!」と思ってから文章を作っているので、話の内容やテーマがうまく定まっていません。課によって、そこそこテーマがまとまっていて、イケてるやつもあるんですけど…微妙なやつも結構あって…その辺の自信のなさからか、みんなの日本語では課ごとのテーマや題名は全く書かれていません。「第1課、第2課、第3課…」と、淡々と続いていきます。

「できる日本語」とか「げんき」と言った教科書であれば「第1課・はじめまして、第2課いくらですか…」みたいな、タイトルを見ただけでどんなことができるか(Can-do)、どんな状況で使うかの場面設定が簡単に想像できるんですが、みんなの日本語は、ぱっと見「その課を勉強すればできる様になる行動(Can-do)、どんな状況で使うかの場面設定を想像しにくい」という欠点があります。

なので、みんなの日本語を教える際、教師は授業の導入に、教科書内容からアイデアを捻り出し、学習者のスキーマを活性化させるような何かテーマや内容を準備する必要があります。


注意点⒉ ターゲットの文型とターゲットではない文章がある。

前回のオリエンテーションの動画でも説明しましたが、その課で教える文型は練習Aにまとめられています。練習Aは学習項目であり、教える文型。つまり、ターゲットの文型です。授業では、このターゲットの文型を理解できるように授業します。でも、ただ、ターゲットの文型だけを扱っても授業はできません。ターゲットの文型だけでは、会話として不自然なものになるからです。そのため、まだ教えていない文法の文章も使うことがあります。「文法的には間違ってはいないんだけど、なんとなく、こっちの言い方の方がピッタリくるよな〜」とか、「このセリフの後は、大体、このセリフが続くよね〜」みたいなことがどうしてもあるからです。そう、これが第1回動画で説明した「4つのコミュニケーション能力」の、社会言語学的能力を養うってやつです。

社会言語学的能力を養うために、やむなくターゲットではない文章を使うときは、チャンク(塊)として、さらっと入れ込みます。ターゲットではない文章は、決して詳しく教えてはいけません。ターゲットの文型以外の文章は深追いしない。「教える」とも言わないほど、さらっと「入れ込む」ことが重要です。

授業で使う文章は絶対全部、丁寧に教えないといけない!というわけではありません。教えないことでスムーズに学習が進むのであれば、教えないこともまたテクニックです。教師という仕事は、「教えることが仕事」と思われがちですが、私は「教えることは一つの方法論に過ぎない。学習者が日本語を理解し、日本語を使えるよう、助けることが仕事だ。」と考えています。ですから、学習者の学習段階によっては、授業で扱うとしても、あえて「教えない」ことも必要だと考えます。

教えないテクニックはかなり使えます。ですが、学習をスムーズに進めるためにも、教師は、どの文がターゲットの文型で、どれがターゲットではないのか、明確に押さえておく必要があります。

注意点⒊ たまに言葉のセレクトが微妙。

これは、私が感じるだけなのかもしれませんけど…「みんなの日本語」は、たまに日本語のセレクトが微妙…って思います。言葉のチョイスの感覚が違うんかな〜。私なら「ありがとうございます」って言いそうなところで「どうも」って言ったり、「よろしくお願いします。」って言いそうなところなのに、「どうぞよろしく」って言ったり、間違ってないけど、なんか、全体的におじさんっぽいな〜と思う時があります。みんなの日本語の登場人物が、最近できた教科書(できる日本語、とか、げんき)と比べて、見るからに平均年齢高いからかも?これって教科書ができた時代が関係あるのかもしれませんが、みんなの日本語ができた1980年代って、多分、日本語を勉強している人は中年世代が中心だったんだと思うんです。でも、現在はEPAとか、技能実習とか、10代、20代の日本語学習者が増えてます。「みんなの日本語」で教えるときは、学習者の年代に合わせた言葉のチョイスになっているのか、注意してあげる必要があるんじゃないかな〜と私は考えています。


教えるときの ももこ的極意

 みなさん!「授業がうまくいくための極意」があったら知りたいと思いませんか?私も知りたいです。笑

いいアイデアや考え方があったらコメント欄で教えてほしいです。

たたき台として、私の考える「ももこ的3つの極意」をみなさんにお伝えしたいと思います。


① 初級の学習者は日本語がわからない。だから、説明しない。

日本語を教えるのに、説明しないって、なんか矛盾していると思いますよね。でもね、語弊を恐れずにいうなら、学習者って、日本語わかんないんですよ。仕方がない。だから、説明しても無駄。説明するんじゃなくて、推測させるんです。いっぱい例文を与えて、そして、推測させる。うまく推測させるための例文をいっぱい考える。例文は経験とともにストックさせておく。これに尽きると思っています。

教え上手を目指さない。推測させ上手を目指す!


② 初級の学習は前向きにさせるのが吉。

日本語の勉強始めたのに、先生は厳しいわ、難しいわ、わかんないわ…こうなったら、はっきり言って地獄以外のなにものでもありません。とはいえ仕事ですから、教師としてやることはやらんといかん。ではどうするか?笑顔、拍手、学習者と目を合わせて微笑む、という行動を単純に割増しすればいい。特に第1課は特別で、普段の3割増しくらいの設定にしましょう。日本語に対する第一印象が大事だからです。先生が笑顔で、たくさん拍手で褒めてくれて、目があったら微笑んでくれたら、学習者は安心します。「あー授業楽しかったな、また明日も楽しみだな〜」って思ってもらうのが、まずは大事だと思います。

そういえば、人というのは、他人とのコミュニケーションの際、情報源として、全体の70%をノンバーバルによる情報に頼っているって赤本に書いてありましたが、覚えていますか?赤本の第5版だとp.386、4版だとp.317に書かれています…。

・人と人とのコミュニケーションは、「言語によるもの=バーバルコミュニケーション」と「言語によらないもの=ノンバーバルコミュニケーション」の2つのコミュニケーション手段に分けられる。

身体動作学を提唱したバードホイステルによると、母語話者同士が会話をした場合でも、言語による=バーバルコミュニケーションによる情報伝達は全体の約30%にとどまり、残りの70%は言語によらない=ノンバーバルによる情報伝達によるもの。


言葉によらないノンバーバールコミュニケーションとは、例えば、
・身振り、手振り
・表情
・視線(アイコンタクト) 
などです。

この中で身振り手振りに関しては、授業においては比較的意識して行うことが多いです。しかし、問題なのが「表情、視線」です。みなさんは普段、表情や視線を意識してコントロールしていますか?この無意識でやっていることの多い「表情と視線」に、教師が持っている学習者に対する姿勢が顕著に現れると思います。

私は日頃から、この無意識になりがちな「表情と視線」で失敗しないように、いくつか学習者に対する姿勢を決め、常に思うようにしていることがあります。

・どんな国の人でも、目を合わせて、笑顔で、名前を呼ぶと大体仲良くなれる。
・名前を覚えようとする姿勢は、相手への最初の敬意。
・一生懸命、自分の名前を覚えようとしてくれている姿を見て、好感が持てないという人は少ない。
・相手を大切に想う気持ちと、相手を尊重している気持ちは、言葉がわからなくても、絶対、伝わる。
・嘘と誤魔化しは言葉がわからなくても、絶対、伝わる。
・言葉がわからない外国人相手だからこそ、ノンバーバルコミュニケーションが大事。

こんなふうに考えていれば、きっと自然と「表情と視線」に誠実さが現れるんじゃないかな?と思っています。目は口ほどに物を言うって言いますしね!


③ 冷静に学習者を観察する。

笑顔で教えて楽しませるのと同時に、「学習者がどのような学習ストラテジーをもち、どのような他者とのコミュニケーションストラテジーを持っているか」を冷静に観察しましょう。

例えば、

・積極的に発言をするか?
・恥ずかしがり屋か?
・慎重か?チャレンジ精神があるか?
・失敗した時、わからない時のショックの受け方と回復具合は?
・目を合わせやすいか?
・笑顔を見せると笑顔で返してくれるか?

など、学習者に関するデータを収集するのは大切な仕事だと思います。授業を考える際、どの問題で誰に当てたら効果的か?というような計画が立てられるようになると思います。

また、
・どの程度、文字を読めるのか、書けるのか」学習進度に関するデータ収集
も大事です。

今回の動画では、「みんなの日本語」の3つの注意点と、初級の学習者に対する「ももこ的3つの極意」についてお話ししました。

ぜひ、みなさんの極意もコメントで教えてください。


新しく始める緑シリーズでは、日本語の授業を考える前に知っておきたい文型の知識をまとめます。役に立ちそうだなと感じたら、チャンネル登録と、「いいねボタン」で応援をよろしくお願いします!次回、いよいよ「みんなの日本語」文型分析を開始します。お楽しみに!


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