見出し画像

シンジケートローンとABL

1 ABLをシンジケートローンで組成する場合に、実務上、どのような問題が生じるのか。シンジケートローンとは、複数の金融機関が一つのグループとなって借入人に対して行う貸付などと定義される。シンジケートローンにおいて不動産に抵当権を設定する場合には、各金融機関が当該不動産に対して同順位で抵当権を設定することができるため、大きな論点は生じない。しかし、集合物動産や集合債権に対して譲渡担保権を各金融機関が同順位又は実質的な同順位で設定しようとする場合には、後述するように様々な論点が生じる。

2 まず、集合物動産譲渡担保を設定する場合には、方法論として、①集合物に対して1個の譲渡担保権を各貸付人が共有にて設定する方法、②集合物に対して個別・独立の複数の譲渡担保権を各貸付人が同順位にて設定する方法、③集合物たる目的物を種別ごとにいくつかに分割して、それぞれに対して各貸付人が譲渡担保権を設定する方法が考えられる。
  ②については、同一の対象物について複数の譲渡を有効かつ対抗力あるものとして行うことができるかどうかは疑義があると考える見解があること、③については、目的物をどのように分割し、どの金融機関がどのように担保設定するかについて各貸付人が納得する内容で合意することはそれほど簡単ではないことから、①の方法によることが多いように思われる。
  そして、①の方法については、共有持分の割合をどのように定めるのか、保存、管理、処分行為についてどのような合意をするのか、処分した場合の分配の定めをどのようにするか等について各金融機関での取り決めが必要となる。

3 次に、集合債権譲渡担保を設定する場合には、方法論として、(a)集合債権に対して単一の譲渡担保権を各貸付人が準共有にて設定する方法、(b)集合債権に対して個別・独立の複数の譲渡担保権を各貸付人が同順位にて設定する方法、(c)集合債権を構成する債権の束をいくつかに分割して、それぞれに対して各貸付人が譲渡担保権を設定する方法が考えられる。
  (b)については、同一対象物について複数の『譲渡』を有効かつそれぞれ対抗力を備えたものとして行うことができるか疑問があること、(c)については、設定者が保有する集合債権の束をどのように分割するか、どの金融機関がどのように担保設定するかについて各貸付人が納得する内容で合意することはそれほど簡単ではないことから、(a)の方法によることが多いように思われる。
  そして、(a)の方法についても集合物動産の場合と同様に、準共有持分の割合、保存、管理、処分の内容、実行時の分配の定め等について各金融機関での取り決めが必要となる。

4 以上のとおり、ABLをシンジケートローンで組成する場合には検討すべき論点が発生することになるが、この点に関する詳細は、ABLの法律実務(日本評論社、弁護士山口明著)の208頁以下を参照されたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?