24年公示地価への所見

■2024年1月時点の公示地価が発表された。全国平均では地価の上昇が加速している。マスコミはこの現象をあたかも「バブル」かのようにセンセーショナルに報道し、その原因として「タワマン」「インバウンド」「リゾート開発」「半導体誘致」を取りあげている。これらのうち一部についてはその通りだと思うが、生データを観測すると、これら報道とは違う動態が見えてくるように思える。

※以下、地価に関するすべてのデータのソースは、下記ページを参照している。


<全国>
■全国では住宅地2.0%の上昇、商業地3.1%の上昇。前年はそれぞれ1.4%、1.8%の上昇だったので、単に「地価が上昇している」のではなく、「上昇が加速している」といえる。これだけ見るとバブルのように見えなくはない。しかし、2023年の物価上昇率(コアCPI)伸び率は3.1%と、商業地と同値であり、住宅に至ってはコアCPIより上昇幅が小さかった。直近1年間は、「世の中に流通しているモノやサービスほど、住宅価格は伸びていない」といえる状態で、住宅バブルとは程遠い。(c.f. 80年代バブルのころは、コアCPI伸び率が3%未満にもかかわらず住宅地は毎年10%以上上昇し続けていた)

<北海道・札幌>
■北海道は住宅地4.4%上昇、商業地5.1%上昇(前年はそれぞれ7.6%、4.9%の上昇)。伸び率は、47都道府県のうち2番目に高い。札幌市は、住宅地8.4%上昇、商業地10.3%上昇(前年はそれぞれ15.0%、9.7%の上昇)。こちらも伸び率は、47の政令指定都市のうち都市のうち2番目に高い。北海道は、9年連続で全国の伸び率を上回っており、札幌圏の地価上昇幅は、全国トップレベルの状態が続いている。
ただし、他の地域と異なり、特に住宅地において伸び率は23年に比べると急激に鈍化している。札幌圏のデータをより詳しく見ると、例えば札幌市手稲区の地価上昇率(住宅地)は22%→6%と急ブレーキがかかっている。また、札幌市の住宅地上昇率は8.4%だが、周辺4市(石狩、恵庭、北広島、江別)はいずれも10%を超えており、非常にゆるやかながら「ドーナツ型」となっているように見える。
(三大都市圏+福岡を見ると、いずれも中心地ほど上昇率が高い「ピラミッド型」となっている。今年のデータに限れば、「ドーナツ型」は札幌圏にだけ現れている)
また、札幌の10区をみても、中心地である中央区やその周辺区が顕著に高い、ということはなく、比較的均一な上昇率となっている(これも三大都市圏+福岡と比べると特異な現象)
このことから、①狭い特定のエリアが伸びているのではなく、(意外と)すそ野は広い、②ただし、札幌の地価が高すぎて周辺市に流れている可能性が高い。

■そもそも、ここ7,8年ほど札幌の地価の伸びが、全国比で顕著に高かったのはなぜか。様々な仮説が考えらえるが、経済規模に対して、単純にこれまで割安だったことが一番の要因ではないかと考えられる(23年現在でも、市平均で仙台・広島より1~3割安く、名古屋・福岡の約半額。平成まではもっと大きく乖離していた)。

■そう考えると、ここ数年の札幌の住宅地上昇は、これまで割安だった状態の調整に過ぎず、調整が行き過ぎた結果直近は地価が高くなってしまい、住宅需要(実需・投資ともに)が周辺都市に流れつつある、という説明が妥当だろう。そして、まだ周辺に伸びる余地を残している三大都市+福岡に比べると、今後さらに上昇する余地は比較的小さいと考える(それでも、全国平均よりは高い状態が続くと思うが)。また、利上げのよる短プラの上昇やリセッシュン入りなどがあれば、場所によってはゼロ近傍、場合によっては一時的に下落になるかもしれない。(山高ければ谷深し)

また、札幌圏は、三大都市ほど人口の厚みが無く、また出生率が高く今後15年以上人口が増え続ける九州・福岡に比べると、地力は弱い。また人口はほぼ横ばい状態だが今後人口減少が顕著になることは目に見えている。そう考えると、他の地方都市と同様に、「市・エリアの中心部の地価上昇率>郊外の地価上昇率」という傾向が顕著になるかもしれない。

<ラピダス効果>
■全国地価上昇ランキングで千歳市が複数上位にランクインしたことは、大きく報道されている。それに加え、報道はされていないがJR北広島駅前の地点も上位ランクインした。また札幌10区の住宅地のうち、JR札幌駅⇔千歳駅の導線上にある白石区が、唯一10%以上の伸びであった。苫小牧も上昇幅が2.7%と、札幌圏以外の北海道内主要都市のなかでは2番目の伸びであった。ラピダス効果は、千歳市の外側も含め、じわじわとあらわれているように見える。

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