5.新しい世界で生きてみよう
にへどん(けさらんぱさらん研究所)によるインタビュー「『3DシアターNoA(ノア)』 経営者:マヤ氏」
にへどん:
本日は 『K地区』 で大人気の 『3DシアターNoA(ノア)』 を経営されているマヤさんにお話を伺いたいと思います。
マヤさんよろしくお願いします。
マヤ:
はい、よろしくお願いします。
にへどん:
マヤさんはお見掛けするとハーフの方のようですが、ご出身はどちらなんですか?
マヤ:
『マゼラン』 出身なの。(※1)
にへどん:
あ、そうなのですね。あれ、『マゼラン』 ってどの国の都市でしたっけ・・・。ま、いいですね、そんなこと。
ところで、いまや 『K地区』 で一番の人気スポットと呼び声の高い 『3DシアターNoA』 ですが、初めて知った方もいらっしゃると思いますので、まずはどんなものなのか簡単にご説明いただけますでしょうか?
マヤ:
そうねぇ、最近 “3D技術を応用したアトラクション” はいろいろと出てきているけれど、『3DシアターNoA』 の特徴としては、リアルの 『バンド演奏』 があるということ、『フロアーで踊りながら』 体験するということ、3Dメガネのデザインがかっこいいこと、そして、映し出されるストーリーが特殊であるということなどが挙げられるわね。
にへどん:
『3DシアターNoA』 は 『バンドマンたちが生演奏を行うダンスフロアー』 のような場所で行われ、お客さんたちは 『カッコイイ赤いデザインのメガネ(※2)』 をかけて踊りながら3D映像を楽しむ、というわけですね。確かに一般的な3Dシアターとはかなり違いますよね。
マヤ:
赤い3Ðメガネは 『ウルトラアイ』 って呼んでるわ。このデザイン、私とても気に入ってるの。それに生演奏の音、素敵でしょ。
でも、生演奏だけではないの。『アンプに仕込んだ特殊リズムマシーン』 によって微かなリズム音がフロアーに流れていて、これが3D映像と連動して、お客様の本能に刺激をあたえるという仕組みなのよ。
にへどん:
なるほど、そんな仕掛けもあるのですね。ところでどんな “本能” に刺激をあたえているんですか?
マヤ:
簡単に言うと帰省本能ね。
人間には、いえ、人間だけでなく宇宙に住むすべての生命体には “故郷に帰りたい” という本能があるものなの。
そしてそれは、“帰りたいのに帰れない” という場合、例えば 『故郷から見捨てられてしまったために帰れない』 という場合に、帰省本能は最大限に刺激を受けるわ。(※3)
そういう 『故郷から見捨てられた』 というような、絶望的な疑似体験を元に帰省本能を刺激するというのが、『3DシアターNoA』 の大きな特徴ね。
にへどん:
確かに他の3Dシアターとは趣が異なるようですが、なんかそれって、お客様にとても悲しい感情を与えてしまいそうですね。それが、何故こんなにも大人気のアトラクションになったのでしょうか?
マヤ:
今の世の中、科学が進歩し、社会も安定し、飢餓の心配のない世の中でしょ、だから本当は皆さんは幸福感に包まれながら人生を謳歌できるはずよね。
でも、人間というものは不思議なイキモノで、そんな素敵な人生を “感動のない人生” だと感じてしまう場合もあるのよ。
どんなに美味しい料理でも毎日食べ続けていれば飽きてしまうのと似ているわね。でも、たった一日、何も食べなかっただけで、その後に食べる質素な料理がとても美味しく感じられたりするでしょ。
にへどん:
なるよど。つまり “一時的に精神を飢餓状態にすることで、その後の幸福感を触発させる” ということなのですね。
マヤ:
その通りよ。
3D画像を見ている時は、まるで故郷から見捨てられた人のような孤独感や絶望感を味わうわ。でも、その後、その画像が終わると 『怪光線』(※4) に辺りが包まれ、一瞬、自分がどこにいるのか解らなくなるの。そして徐々に、周りにいる “ 同じ体験をした仲間” の存在に気が付くというわけ。
その時に得られる安堵感や一体感がお客様に大きな幸福感を与えるのよ。
にへどん:
素晴らしいですね。ところでマヤさんはどのようにしてそのアイデアを思い付いたのですか?
マヤ:
私がまだ少女だった頃、ある絶望感を味わったことがあるの。とても辛い体験だったわ。
その時は、それこそ 『故郷の星からの迎えを待つ宇宙人』 のように 『迎エハマダカ、迎エハマダカ』 (※5)って心の中で叫んでいたものよ。
「いっそのこと、『こんな狂った星(※6)』 なんか宇宙からの 『恒星間弾道ミサイル(※7)』 で滅んでしまえば良いのよ」とさえ思ったくらい。
そんなときに、ある人から 『コノ星デ生キヨウ、コノ星ト一緒ニ(※8)』 と言われたの。あ、言われたんじゃなくて、彼の目がそう語っていただけかもしれないわね、まるで 『テレパシー』 のようにね。
にへどん:
なんか良いお話ですね。
その方からの言葉、いや、『テレパシー』 によって、生きる希望を見つけたのですね。
マヤ:
そうね、その方から 『テレパシー』 されなかったら、私は絶望のあまり、自らの手で自分の命を絶っていたかもしれないの。
実はね、そのときある薬を使って死のうと思っていたのよ、確か 『J7』 という名前の薬だったわ。(※9)
でも、彼のその 『テレパシー』 のおかげで、頭の中にまるで 『怪光線』 が輝いたの。つまりね、絶望的な感情に支配された後に、そこから抜け出せたことで、とても幸せな感じに包まれたってわけ。
にへどん:
その体験を活かしての作られたのが 『3DシアターNoA』 なのですね。なるほど、よく解りました。
マヤ:
今、絶望感や孤独感を感じているすべての人に、『新しい世界で生きてみよう』 という希望をもってもらいたいわ。
そのことに 『3DシアターNoA』 が少しでもお役に立てたとしたら、とても嬉しいことね。
にへどん:
本当にそうですね。今日は、スバラシイお話をありがとうございました。
※1:ウルトラセブン第37話「盗まれたウルトラ・アイ」に登場した、地球侵略を企てるマゼラン星からの使者の名前が「マヤ」。
※2:「盗まれたウルトラ・アイ」にてモロボシ・ダンから盗まれたウルトラ・アイをモチーフにしているのか?
※3:マゼラン星人のマヤは、まさにマゼラン星から「見捨てられた」存在だった。
※4:モロボシ・ダンの目をくらませ、車ごと崖から落とした光のことか?
※5:「盗まれたウルトラ・アイ」の中で、地球に取り残されたマヤがマゼラン星に送り続けた通信。
※6:マゼラン星人は地球の事をこう考えていた。
※7:マゼラン星人マヤ人が地球を破壊するために使用使用していた武器。
※8:モロボシ・ダンがマヤにテレパシーで語った言葉。
※9:「盗まれたウルトラ・アイ」の中で、マヤが自殺するためにコンピュータに打ち込んだコード。
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