スーパーフェニックス
KANA-BOON、復活!
という希望の響きとともにやってきたスーパーフェニックス。
大阪と東京で、活動再開の狼煙は上げられた。
ライブハウス2会場のみの開催で、チケット争奪戦はかなり狭き門だったようだが、申し込んだらたまたま当選した。
普段から一点集中で申し込んで、当選しなければ行かないというスタンスに加えて、何にも期待しない人生方針ではあったが、その通知を見るとじわじわと嬉しい。
そのままライブの日付に「休み」と記入し、交通手段とホテルを検索した。
やっぱり好きなバンドのライブは、何もかも飛び越えて最優先事項に君臨する。
というわけで平日昼間から新幹線に乗って、東京を目指す。
天気は悪かったが、運休レベルまではいかなくてよかった。
いくつか買い物があったので済ませて改札を通ると、ホームやデッキは電話するビジネスマンやらでいつもより盛況な感じがした。
みんな大変だ〜と、社会人になってからはちょっとだけ共感できるようになった。
やはり仕事は人で成り立っている。
発車時間ギリギリまで見定めてコンビニコーヒーを淹れていたので、荷物を棚に上げ席につくと、割とすぐにアナウンスが流れた。
『下り列車を待ちますので少々出発遅れます』とのこと。
ただ、言い始めてすぐに向かいのホームに入線してきたので、アナウンスは途中で『ただいま到着の下り列車を〜』と機転を利かせていた。
こういうことに意識を向けられるのも、
コンビニのレジの合間にICカードを上着のポケットに移動させておいたり、
さりげないスキマ時間に座席番号を確認しておいたり、
乗る号車により近いルートを選択したり…
これまでの人生で培ってきた経験(失敗)がものをいう。
静かに走り始めた新幹線が、県境を越えると晴れだった。
私の大好きな320km/h区間はしばらく窓の外、新幹線が進む先を見てじっくり堪能した。
これは小さな頃から変わらない。
やがて定刻通りに到着し、事前に検索しておいたルートで渋谷へ向かう。
私はYahoo!乗換案内アプリを使っているのだが、それで鉄道会社・路線・行先・ホームを確認して、あとは上を見上げて各種掲示板に頼る。
あとは、今までたくさん迷った経験が背中を押してくれたので、スムーズに目的の改札までたどり着けた。
ホテルにチェックインできるくらいの余裕があったので、荷物も部屋に置いてから会場へ向かった。
ライブハウスでは整理番号順に会場内へ入っていくが、今回はかなり後ろの方だと推測できたため、特に急ぐ必要はなかった。
むしろ、PA卓後方の位置を狙っていたからだ。
実は出発前に購入していたウエストポーチに、
いくらかの現金、スマホ、ホテルのキー、耳栓など最低限の荷物を詰めて部屋を出る。
道を確認してから10分ほど歩き、会場前へ。
離れたところから様子をうかがっていると、自分の整理番号が呼ばれている。
あわてて階段で会場のあるフロアへ向かうと、まずグッズを購入する。
今回はラバーバンドの水色がかわいいなとピンときた。
支払いが終わりバーカウンターへドリンク交換に向かうと、向かい辺りに各所からのお祝い花が陳列されていた。
カウンターのやや手前でペットボトルの水が配られていたので、ドリンクチケットを差し出し、
お祝い花の前を通過しながら、人の流れを遮らないように一枚写真を撮り、会場内へ。
すでに前から人が詰まっていたが、PA卓後方の柵に1人分の空きがあった。
よかった〜とそのスペースに収まると、後続の人たちもぞろぞろと入ってきて、周辺を埋めていく。
見た目も年代も会話の内容も、何もかも違うけど、
ここにいるのは、KANA-BOONを観に来た人だけなんだなあ。
軽く身体を揺らしながら、メンバーが選曲しただろうかSEに聴き入っていると、PA卓周りにスタッフの方々が集まってきた。
よし、やりますか、みたいな姿が、胸熱である。
ライブがスタートすると、めいめい手をあげたり、手拍子したり、じっと聴き入ったり、跳ねたり踊ったりしていた。
私はこれが好きだ。
強制されたわけではないけど曲の場面によって手拍子と手をあげるを使い分け、盛り上げる。
完璧じゃなくて、なんとなく揃って音を楽しんでいるのが好きだ。
それがまたこの目で見られるとは。
感動したがノリノリなので、涙は流れなかった。
前回から新曲の発表はなかったが、それが逆に盛り上がり必至のライブ定番曲セトリに繫がっていた。
揃ったコール&レスポンスも心地いい。
10thライブのときは夕暮れの時間に合わせたしっとりとした曲もあったが、テンションが上がりっぱなしの明るいセットリストは、復活ライブにふさわしいと思った。
そんな明るいセットリストと裏腹に、MCでは観客がしんとして耳を傾けることも言っていた。
元メンバーの脱退について、Vo.鮪さんは「最終的には自分が決めた」「優しさと甘さは違うから」というようなことを言っていた。
目の前でそのことに言及してくれたことで、信頼は揺らがないものとなった。
そこで軽々しい冗談はなかったし、真剣に気持ちを言語化しているのがひしひしと伝わってきた。
彼らが納得して今の道を進んでいるということが分かってよかった。
そして、メンバーも「あっという間!」というくらい時間は早く経った。
でも、それも楽しかったからだ。
正直、この先は未知だけど、私はまたライブに足を運ぶだろうと思う。
(爆音もモッシュもサークルも大嫌いだから、KANA-BOONのライブが一番好き)
その日はよく眠れた。