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シュツットガルトの輝けるスターたち(Cプロ)

このラインナップで2階中央17000円は破格!

……と思って買ったものを直前で2演目変更(うち1つは当日)という見通しの甘さには少々思うところはありますが。私的最終防衛線(コンチェルト、マイヤリング、ボレロ)は守り抜いてくれたところに謝意を申し上げたい。
でもバレエ団の看板演目(来日予定作品)が観れなかったのは痛い。
 
 だがしかし当日に入ったノイマイヤー『椿姫』の白のパドドゥ(以下、白椿)。もともとあまり興味のない演目だったのだけれど、番狂わせで観れたのはよかったな。恋人同士の思いが通じ合って「こんな商売やめて田舎に引っ込みましょうか(´∀`*)ウフフ」な場面。だけどヒロインが着ているのは高級娼婦しか切れない白の総レースのドレス。この白のドレスが『ジゼル』2幕の衣装に酷似しているのは相当意図的なものだと思う。過去からも未来からも、世間からも隔絶した刹那の、それでもその時には確かにそこにある、愛の瞬間のような何か。
 東京バレエ団でも初演予定のクランコ版ロミジュリ。私はマクミラン強火担なのでどうしてもそれありきで観てしまうのけど(そこに優劣をつけたいとも思わないけどね)。マクミラン版の活発なジュリエットとガンガン火力入れてくパッションに対して、クランコ版はまだまだ幼いジュリエットにジェントルなロミオが少しずつお互いの気持ちを確かめ合う様子がこれはこれでいいものだ。

 第二部始めがバデネスの黒鳥なのは、多分絶対の布石だったのだと思う。クランコ版の黒鳥はマリー・ヴェッツェラと同じ傾国の美女。何年かまえの来日公演でチケット取れず、軒下の鰻の匂いを嗅ぐようにして曲編成を確かめていたのが懐かしい。もうあの時代に私は戻れない。
 第二部はとにかくコンテが強かった。マクミランの『コンチェルト』も含めて。これも東京バレエでやってくれないかな。

 そして『マイヤリング』!!フォーゲル様なにげ本日初登場だよ。そしてホリゾントどうする気かと思えばそれかよ!ていうかジャケット脱ぐの早すぎて目に入らなかった…(泣)
 そしてこの人のルドルフは銃向けられても発砲されても心の起伏が見えない男なのね。※ここであからさまに怯えたり喜色をあらわにする役もいる。
 それだけに幕引きが人間性の最終崩壊、という気配がするのだけどね、劇中の発砲も、頭を抱えてくずおれるのも、抜粋された場面より前の布石があっての描写なのだと改めて思った。あと、空砲でも結構な音がするのね。
 これは完全な余談だけど、今回は私も含め赤コート(およびそれに類するもの)の女性が多かった。考える事はみな同じ。

 今回限り、と鳴り物入りで喧伝されたベジャールの『ボレロ』
中高の先生が明らかにベジャール作品とジョルジュ・ドンが大好きな人だったけど、私はそうじゃなかった、けど、今回は圧巻という以外の言葉が思いつかない。それでも映像でドンの『ボレロ』、そして今回の『ボレロ』を見て固まった私の独断偏見的結論は、この作品のソロは男が踊るものだ、ということだ。どれだけ実力ある素敵な女性でも、序盤で出てくる身体の陰影が違って見えてしまうのだから、仕方のないことなのだろう。それこそホルモン剤や性転換手術でも変えようのない身体性と踊りの根源的なかかわり。
 異論があることは重々承知です。

「今度はカンパニー全員で」
このメッセージ、実現してほしいな。そして今度は全幕見に行きます。

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