本の世界

高校2年になって、読書が好きになった気がする。もともと本を読むことは好きだった。一番好きなのは映画を観ることだ。映画は、SFからファンタジーまで、様々な世界へ導いてくれる。でも、毎日映画館に行けるわけじゃない。そこで、本の出番というわけである。本も映画同様、開いてしまえばもう別世界の中にいる。エッセイから詩、小説に随筆、ジャンルは多種多様。中でも私は、小説が好き。映画化されたものの小説や、好きなアニメの外伝のようなもの。テスト後で時間が空く時、1人の世界になりたい時、本を開く。一度旅立ってしまえば、チャイムの音も、楽しそうなお喋りも、何も耳には入らない。気づいたら先生が何か話している、なんてこともある。授業態度?知らないなあそんなの。真面目って言われるけど案外違うんだよね、私。
今日は終業式だった。電車の中で古典文法をさらっと見て学校へ。着くのはいつも最初だから、暖房を入れて一番奥の席へ行く。座って一冊の本を取り出した。書名は「李陵 弟子 名人伝 山月記」。好きなアニメが、日本や世界が誇る文豪たちが出てくるもので、彼らが書いた著書の数々を、読んでみたいと思って何冊か買った中の一冊。ずっと時間がとれなくて、最後に読んだのは何ヶ月も前だ。栞が挟んである箇所から続きを読み始める。中島敦の作品で初めて読んだのは山月記。綴られた文章が美しくて、漢文が基になっていると知った時は驚いた。そこに惹かれたのも本を買った理由である。ここにきてようやく李陵を半分くらい読むことができた。たまたま世界史Bをとっているということもあって、歴史的事実や人物名などもところどころ出てくるものは理解ができる。今授業でやっている夏目漱石のこころもそうだが、文豪たちの書く文の一つ一つがとても素晴らしい。そのような書き方があるのだという勉強にもなる。
そんなことを考えながらふと顔を上げると自分以外いなかった教室にクラスメイトがたくさん来ていた。時計を見ると朝礼前の時間まで迫っていた。読書をしているとあっという間に時間が過ぎていく。朝礼の後の担任の話は右から左へと流しつつ本を読んでいた。
学校後に立ち寄った本屋で、ずっと読みたかった本を見つけて買ってみた。少し高かったけど気にしない。初めて買うエッセイ集だ。著者は私の好きな人。どんな文章が書いてあるのだろうとワクワクしながら読み進めた。うまくは言えないが、簡潔に書かれていて、それでも過不足のない文章は、すんなりと入ってきて、馴染んでいった。なんだろう、この感じ。あの小説とも、文豪たちのものとも、また違う新しい世界。
ああ、本って素敵だな。書く人が違うだけでこんなにもコロコロと世界が変わり、私を連れて行ってくれる。
そうそう、本の途中に栞を挟もうとしたらいつも使っているものは李陵に挟んであって、もう1つのものを探していたら、ある本の第65章というまたなんとも微妙なところに挟まっていることに気づいた。前後にささっと目を通したけど、これまた最後に読んだのが前すぎて内容が全然思いつかなかったから仕方なくその栞をとって、この新しい本に挟んだ。
また栞、探そっと。