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個人情報を知りたがる女

10年ほど前、ゴスペルを習い始めました。

市内にある規模の大きなスクール。
本格的にプロのレッスンを受けて
大きな声でみんなで歌うことは
腹の底から気持ちの良い時間でした。

何より一番心地よかったのは

「子供のつながりがないこと」
「仕事の仲間でないこと」。

純粋に、初めて出会う人たちで
なんのしがらみもなく、
私が「私」として楽しむ時間であったことです。


・・・ある女性の登場までは。

仕事が忙しいせいか、普段は欠席がちだった人。
みんなからは「社長」と呼ばれていました。
初めて会った時は、その清楚な上品さから
私より1つ年上には見えなかったし
とっても親近感のある素敵な「社長」でした。

スクールの場所は、私の家から
電車の乗り換え含めて小一時間のところ。
趣味の習い事としては
まあまあの距離と時間です。

「社長」は偶然にも私の駅と一緒で
  そんなところから通う人、
  他にもいるんだと驚きつつ、
初めて会った日、ちょっと緊張しながら
電車で一緒に帰りました。


すると「社長」は穏やかな表情で
こんなことを言い始めました

  家はどこですか
  何歳ですか
  仕事は何ですか
  家族構成は
  子供はいくつですか
  どこの大学ですか
  あなたはどこの高校出身ですか
  大学は、就職先は、、、、

なんの躊躇いもなくどんどん飛んできます。

まるで尋問、取り調べです。

私の今の家族にとどまらず
実家の場所、兄弟姉妹、
そんなことまで聞かれました。
そのうち
旦那の年収まで聞かれそうな勢いです。

違和感を覚えながら一通り私が答えたあとは
「社長」自身の生い立ちも話し始めました。
なかなかディープな半生でしたが
初対面の私にすんなり告白してくれた様子は
なんだか話慣れしてるなあという印象。


「社長」は

結婚相談所の社長さんでした。


仕事柄、会う人全ての履歴書を持ち、
事細かに質問して
その人を丸裸にしていくのでしょう。

話してくれた「社長」の半生が
事実なのかは分かりません。
あまりにも「相談所」に来る人のために
できすぎたストーリーだったからです。


なんだか恐怖を覚えました。

こんなに個人情報を知りたがる人。







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