チンパン回覧実記(サービスエリアにて)⑧
[サービスエリアにて]
高速道路上で一悶着後、お昼にはまだ早い時間帯なのですが小腹を満たすことにしました。人間界の食事はカロリーをたくさん摂取できますので制限をかけなければ太ってしまいます。しかし、制限をかけようと考えても食欲を増発させるにおい、造形美などが私の煩悩に攻撃を仕掛けてきます。毎年除夜の鐘を聞いておりますが効果は薄いようです。いや、効果が薄いのではなく私の煩悩は108個以上存在し、その108個目を超える欲望が私を突き動かしているのかなと、自分に都合が良いように解釈をしております。もしそうであるのならば、除夜の鐘のせいではなく、己の欲深さが膨張している、つまり宇宙膨張論と同じだと関連させることが出来ます。とても規模の大きな話です。
「チンパン、何考えてるの。早く行こうよ。」
友人が私を待ってくれていたようです。
「申し訳ございません。今行きます。」
午前中のサービスエリアにはそれほど多くの霊長類はいません。男女仲良くグループになっている組もあれば、年輩の方々のグループがいる程度です。家族連れは少ない様子です。お食事処に向かう途中に、ある女性霊長類グループに話しかけられました。
「すみません。チンパンジーですよね。」
「左様です。ナイジェリアチンパンと申します。あなた方様はどちら様でしょうか。」
「私たちは大学のサークル仲間です。」
チンパンジーが人間界を闊歩している様子が面白いようです。少しお話をしませんかと誘われましたので、友人に相談したところ「別に大丈夫だよ。」と承諾を頂きましたので一緒に軽食を取ることに致しました。
「ありがとうございます。私、チンパンジーと食事が出来るなんて感激。」
「感情の高揚中に水を差して大変申し訳ないのですが、お食事処に向かう前に厠(かわら)に行ってきてもよろしいでしょうか。」女性霊長類たちは何を言っているのだという表情をしておりましたので、すかさず友人が「トイレ」です、とフォローをしていました。
バナナを購入したいと思います。メロンも食べてみたいです。