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ナイジェリアチンパン、さるかに合戦(外伝)

昔々あるところにゲラダヒヒ(旧世界ザル)とカニがおりました。もとい。今から約800年前の鎌倉時代の頃のお話です。源頼朝が鎌倉幕府株式会社を創設しました。資本主義の概念をいち早く取り入れて対価と奉仕(御恩と奉公)の関係を示して武士の心を鷲掴みにしました。そんな中、鎌倉幕府株式会社に同期として入社したゲラダヒヒとカニがおりました。

ゲラダヒヒは面接の際にお調子者気質を気に入られ無事、御家人となりました。一方のカニはというと大層心が広く面接官を務めた源頼朝、北条時政、和田義盛などを感心させたと言います。ゲラダヒヒは内心面白くないと感じておりました。

さて、ある日の出勤日。カニが大きな風呂敷を担いでおります。ゲラダヒヒはその中身が気になりましたので、カニに尋ねました。

「こちらは牛鍋セットです。本日のお昼ご飯にしようと思い、重たいのですが持ってきてしまいました。」

給料を計画通りに使わないゲラダヒヒは現在無一文です。給料日まで後10日。サバイバル術でなんとか凌いでいる身としては羨望の眼差しを送ってしまいます。ズル賢いゲラダヒヒは考えました。そういえば、葛飾区の派出所のゴリラ御家人からピンチな時には物々交換をして最終的に食料を得ていると聞いたことを思い出しました。

ゲラダヒヒは物々交換をし続けることが面倒だと感じましたので、いかにカニの牛鍋セットを頂くかを考えました。閃きました。

「カニさん、カニさん。ちょっといいですかい。」

「何でしょうか。」

「不労所得に興味はありませんか。」

カニは毎日自分の身体を使ってお給料をもらうことに意味があると言い、お断りしました。ゲラダヒヒは興味がないなら仕方がないと不労所得に関しては撤廃し、次なる案を提供しました。

「自分に万が一のことがあったら奥様やお子様のその後が心配ではありませんか。」

流石のカニも自分のことではなく家族のこととなりますと思考が変わります。

「確かにもし私がいなくなってしまった場合、家族のことは心配になります。」

「そうでしょ、そうでしょ。実は今、生命保険というシステムを作ろうとしている知り合いがいるんです。もし宜しければその情報をお売りいたしますが。」

カニはしばらく考え込んだ後、興味があるとゲラダヒヒに伝えました。いっちょ上がりと言わんばかりにほくそ笑みましたが、すぐに生命保険の運営の話をしました。

「なかなか理にかなったシステムですね。保険料は後日ゲラダヒヒさんに渡します。」

すかさずゲラダヒヒは情報量として牛鍋セットをいただきたいのですがと伝えたところ、カニは分かりましたと承諾しました。

ゲラダヒヒは久しぶりにきちんとした食事を取ることが出来て満足しました。少々眠たくなってしまいましたので、木の下で寝転んでおりましたところ、毘沙門天と阿修羅がやって来ました。

「おい、ゲラダヒヒ、起きろ。生命保険がどうのこうのってカニから聞いたんだけど、一枚噛ませてくれよ。」

鎌倉幕府親衛隊の2人を目の前にしてゲラダヒヒは緊張して固まっていましたが、生命保険の話を何とか2人に伝えました。

「じゃあ、この金お前に預けておくから手続きが済んだら親衛隊室に来てくれ。」

かしこまりました、と伝えた後ゲラダヒヒは考えました。これで金稼ぎが出来るかもしれない。実際の保険システムは段階的に分かれていて、依頼人からAランクの料金を頂いてこっそりBランクに加入すれば、差額を着服出来る。

早速終業後に生命保険のシステムを作ろうとしているナイジェリアチンパンの処に向かいました。

「今日、3人から生命保険に入りたいって頼まれたよ。」

「左様ですか。ゲラダヒヒさんは集客がお上手ですね。もし宜しければ、営業を頼めませんでしょうか。」

自分の才能が意外なところにあると気がついたゲラダヒヒは、翌日から職務中に勧誘を開始しました。あちこちの御家人に声をかけてお金を徴収していると、そのことを耳にした大江広元、三善康信、金剛力士婀形と金剛力士吽形兄弟などもゲラダヒヒにお金を預けに来ました。

差額分で今まで見たことのないお金を手に入れたゲラダヒヒは感覚が麻痺してきました。

カニから牛鍋を頂いて一週間後。カニがまとまったお金をゲラダヒヒの処に持ってきました。

「遅くなって申し訳なかったね。こちらを知り合いの方に生命保険料として渡しておいてくれるかな。」

最近は役職の高い人物からお金を徴収していたので、カニのお金が少なく感じます。1番初めの勧誘者だから仕方がないと思い、そのお金を受け取り後日受領書を渡すことを約束しました。

さてさて、ゲラダヒヒが順調にお金を増やして悪事を働いている頃。生命保険システムの起動の目処が立ったので、ナイジェリアチンパンは各お客様に対して最終確認と再度詳細説明のためにご自宅訪問を開始しました。

まずはカニ宅に向かいます。

「この度はナイジェリアチンパン保険会社のサービスにご加入して頂き誠にありがとうございました。契約内容の確認をさせて頂きます。お客様のご希望プランはCでございますが宜しいでしょうか。」

「あれ。ゲラダヒヒからはBコースと伺っておりましたが。」

「おかしいですね。こちらの受領書には保険料は〇〇円徴収してCとなっております。」

ナイジェリアチンパンは何かの手違いが発生してしまいましたと陳謝し次のお宅に向かいました。

「阿修羅様。この度はナイジェリアチンパン保険会社のサービスにご加入して頂き誠にありがとうございました。」

「俺は戦があったら先陣を切って向かわないといけないから、家族のために少しでも財産を残せるこのシステムはありがたいと思ったよ。」

「ありがとうございます。さて、阿修羅様はAコースでのご契約で宜しいでしょうか。」

「ん、確かSコースで受け付けたはずだが。」

「左様ですか。こちらにございます受領書にはAコース料金の受領とAコース契約となっております。」

「ゲラダヒヒには確かにSコースって伝えたぞ。ちゃんとしてくれよ。」

ナイジェリアチンパンは深々と頭を下げて確認が取れ次第ご連絡しますと約束をして阿修羅宅を後にしました。

何かおかしなことが起こっているようです。ナイジェリアチンパンはゲラダヒヒに連絡しました。ゲラダヒヒは自分には非がないことを力説していましたので、ナイジェリアチンパンは信用しました。しかし、お金を今まで見たことのないほど手に入れたゲラダヒヒは日常生活のレベルが明らかに上がっていますので周囲から不審な目で見られております。そのことにすら気が付いていないゲラダヒヒです。

毘沙門天がいつもの鍛冶屋で刀を鍛錬してもらっているところに、ゲラダヒヒが来ました。この鍛冶屋は料金が高いので一般御家人の給料では利用できません。

「旦那、あいつ金払えてるのか」

「お代は頂いております。刀も新調されましたよ。」

毘沙門天はゲラダヒヒを疑いの目で見て尋ねました。

「羽振りが良いな。頼朝公から特別な依頼でもあったんか。」

「そんなものはございませんよ。実力でお金を稼いでこちらの鍛冶屋を利用しているのです。」

毘沙門天は阿修羅にこの出来事を伝えました。阿修羅も保険契約の齟齬があったことを伝えました。どうやら何かおかしなことが起こっているようですので、カニの処に向かいました。

「私も契約内容が違っておりました。ただナイジェリアチンパンさんがそんな詐欺をするとは思えません。」

「確かにあのチンパンジーには誠意があったからな。」

毘沙門天と阿修羅はカニと共にナイジェリアチンパンの会社へと向かいました。

ナイジェリアチンパンはお客様情報と契約内容受領書を照らし合わせていました。しかし、全ての受領料金と契約内容に間違いはありませんでした。疑いたくはありませんが、ゲラダヒヒを疑わなければならなくなりました。そんな時に毘沙門天たちがナイジェリアチンパンの会社に着きました。

「毘沙門天様がおっしゃる通りゲラダヒヒを疑わざるを得ません。大江広元様や金剛力士兄弟様にもご契約を頂いておりますので確認をしに行きましょう。」

一行は大江広元、金剛力士兄弟のもとに向かい話が違うことを確認しました。状況的にゲラダヒヒが契約金の差額分を着服していると容易に推測出来ました。

阿修羅、毘沙門天、金剛力士兄弟、大江広元、三善康信、カニなどが一斉にゲラダヒヒ宅に向かいました。その光景を見た百姓たちは一体何事だとざわついておりました。

「ゲラダヒヒ、いるか。」

「はいはい。一体何の御用でしょうか。」

「お前、着服してるだろ。」

「何のことでしょうか。」

「しらを切るつもりか。」

「私には何のことだか。」

そんなところにフェラーリが止まりました。そこから出てきたのは社長源頼朝でした。どうやら今から六波羅探題を建てる計画の打ち合わせのために京都に向かうところだったようです。

「三善と大江まで揃ってこんなところで何やったんだ。」

三善康信がこれまでの経緯を説明しました。

「それが本当ならゲラダヒヒを成敗せねばならぬな。この頼朝に本当のことを申せ。」

源頼朝に嘘がバレたら奥州藤原氏や源義経のようになることがすんなり想像できたので白状しました。

「真偽が明るみになったので私は京都に向かうとする。あとの裁きは三善康信に任せる。」

さて、三善康信が提案した案は以下3つでした。

①毘沙門天と戦う

②阿修羅と戦う

③金剛力士兄弟と戦う

ゲラダヒヒの取った選択はどれだったのでしょうか。『吾妻鏡』に記載がございませんので詳細は分かりません。今後研究と史料発見により、明るみで出ましたら記載したいと思います。めでたしめでたし。









バナナを購入したいと思います。メロンも食べてみたいです。