一瞬のまたたきのために

わたしは有名になれない。
うまくしゃべれないし、自己開示もとても下手で、いつも誰かに嫌われることに怯えている。
緊張するとうまく喋れず声にならない声が息としてしゅーと抜けていく。
歌を歌うのは好き。絵を描くのは好き。ものづくりは好き。文章を書くのは好き。
だけどそれをうまい形にレイアウトすることはできない。
いろんなものごとが足元にいつも散らばっていてただ浪費した時間とお金だけが目の前に浮かび塞ぎ込む。
何かを企画し、それを実践出来る人。それは本当にすごい。尊敬と羨望だ。わたしにはできないことができる。わたしにはできない。
わたしにはできないことを数える。
数えていて疲れてきた。
ひー、ふー、みー、よー

パレスチナデモのとき、スピーチ上手くできないから、もういっそのこと歌うことにした。わたしはこういうことしかできない。
スピーチのあと、パートナーの目がうるんでいた。パートナーは言った。
「ちょっと泣いちゃった」
パートナーの目はとてもキラキラ輝いていた。その後、わたしの歌声がデモの記録映像に使われていた。その映像は海を超えて世界に届いた。SNSという海を泳いだ。

晴れている日の海は陽の光に照らされキラキラとまたたく。キラキラとビーズを溢したみたいにばらばらとひかる。このひかり、わたしはぜったいけしたくない。
パレスチナではいま、このひかりがどんどんけされつぶされぼろぼろにされている。
ひとつひとつの、このひかりが今この間にもきえている。
わたしはこのひかりをけしたくない。見なかったことにしたくない。きらきらひかる心細くも力強いまたたきのために、わたしにできることを。

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