19年8月に読んだ本の一言感想メモ
◆19年7月はコチラ
・『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』松岡圭祐★★★★☆
タイトルの時点でもうすでに面白い。モリアーティ教授との死闘を辛くも制したホームズはしばし行方をくらませるために渡日し、英国留学中に顔なじみだった伊藤博文のもとを頼る。当時の日本で実際に起きた大津事件や足尾銅山鉱毒事件が題材で、史実と創作が見事にミックスされた秀作と思う。
・『平成の教訓』竹中平蔵★★★★☆
「失われた30年」とよばれる平成は、細部をよく見ると改革と愚策が混在した「まだらの時代」だった。小泉政権時に竹中氏が行った一連の改革を自ら正当化するポジショントークは含まれているとは思うが、それを差し引いても全体の掴みづらい平成を俯瞰する意味で一読に値する内容だろう。
・『僕たちはもう働かなくていい』堀江貴文★★★☆☆
ディープラーニングで「目」を獲得したAIは今後ロボットと融合することで手や足といった「身体性」を身につけ、さらなる爆発的な進化を遂げる。AI(ソフト)では欧米に大きな遅れをとってしまったが、ロボット(ハード)に関しては日本に優秀な技術者も多いのでまだワンチャンあるか。
・『西南シルクロードは密林に消える』高野秀行★★★★★
戦後誰一人踏破したことがない中国四川省~インド間の西南シルクロード横断に挑戦。不法な国境越えで公安に捕まって尋問を受けたり、ビルマの反政府ゲリラの助けを借りつつゾウに乗って密林を行軍したり、ほんとよく生きて帰れたな~。東南アジア周辺の少数民族事情にやたら詳しくなったよ。
・『ゲゲゲの女房』武良布枝★★☆☆☆
漫画家・水木しげるの奥さん初の自伝。ご主人の仕事が軌道に乗るまでかなりの極貧生活を強いられたようで、亭主の後ろを黙ってつき従う古き良き女性といった印象ですね。
・『イン・ザ・プール』奥田英朗★★★☆☆
さまざまな心の病をわずらった人が通う神経内科。しかしその医師は患者以上に風変わりで変態的な言動を繰り返す。果たして彼は名医なのか、やぶ医者なのか?人間関係になんとなく疲れた現代人におすすめの短編小説。
・『夢を売る男』百田尚樹★★★★☆
本の出版を夢見る素人をターゲットに巧言令色を使い、多額の費用を負担させ「読者」からでなく「著者」から収益を得る新しいビジネスモデルで荒稼ぎする、とある敏腕編集者の話。一見悪質な詐欺のようだが出版不況の荒波を生きる彼らなりの矜持や信念に頷ける点もありなかなか考えさせられる。
・『イスラム飲酒紀行』高野秀行★★★☆☆
アル中一歩手前の著者が飲酒タブーのイスラム圏で酒を探すトンデモ企画。ふだんニュースで得られる過激なイメージとは異なり、みな寛容で世話焼きなのは意外だった。ただ執筆後チュニジアで起きた反政府運動によって中東諸国の独裁体制が強化されたので、今も同じノリで通用するのかどうか。
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