人間関係の作り方。#05

前回は私がマッチングアプリをはじめたきっかけと、そこに住まう男たちについて話したかと思う。今回はどんな男たちと出会ったのか、思い出せる範囲ではあるが皆様にお伝えしよう。

第3章
とにかく会って、話さなきゃ。

メッセージ如きで人のことを知ろうなんて、無理難題である。そう思った私は、とにかくアポを取りまくって沢山会って直接話すことにした。以前からマッチングアプリをやっていたのもあって、人と会うのにそこまで抵抗はない。これを危険だと思うかどうかは、それぞれの判断におまかせしよう。

1人目 サトウくん

歳はひとつ上だっただろうか。理系大学の院生だと言っていたのは覚えている。メッセージのやりとりではイマイチ好感は持てなかったのだが、少なくとも悪い人ではなさそうだったのでとりあえず話してみることにした。一定数、文字のやりとりになるとつまらない人がいるのは経験として知っている。好感を持てなかったというのは言い方がどうもしっくりこないのだが、なんだろうか、会話に慣れていない感じがぎこちなく、堅苦しかった。そんなに肩肘はらなくても人と人は仲良くなれるよと、教えてあげたい。

そんなわけでサトウくんと合流。……しようとしたのだが、初めての路線に脳がバグって30分以上遅刻した。ごめんね、サトウくん。

サトウくんは優しいのでそんなことでは怒らない。明るく迎えてくれた。ありがとう。

サトウくん、真面目すぎる。それぞれの生まれ育ちの話とか大学でどんなことを勉強していたのかとか、今どんな仕事や研究をしてるかとか、色々な話をした。したんだけど、こう、イマイチ冗談が通じないというか、私はおちゃらけて笑ってもらうのが好きなので、緊張しいで弾けられないサトウくんとはあまり相性が良くなかったみたい。いい人ではあったし、もう少し話してみるかと散歩を提案。1時間くらいひたすら散歩して喋った。

いい人ではある。でもそれ以上はなかった。

その日は解散して暫くはLINEも続けていたのだけれど、だんだん返信が辛くなってしまい、これまでのことは水に流そうということで話をまとめた。いや、一方的に私が会話をストップさせてブロックしてしまったので、本当に申し訳ないことをしたと思う。いい人だからこそちゃんとした態度で挑まなければならなかったのに、その時の私はそこまで考え至るほどの余裕がなかった。言い訳か。自分のルールにさえ反する行為だった。誰かを不用意に傷つけてしまったかもしれない事実、私は一生忘れられないと思う。

2人目 コマバさん

正確な順番は前後している可能性があるので、気にしないで頂きたい。思い出した順に話している。

コマバさん、普通に嫌だったな。

最初はいい人だと思っていたのだけど、距離の詰め方がめちゃくちゃ怖かった。前回の記事で、ゴールにセックスを見据えている男の話をしたと思うが、彼はおそらくそのタイプだった。しかも無自覚に。

メッセージのやりとりは順調だった。順調だったので、インスタのDMでやりとりしたいと言われて交換することになった。そこからおかしくなっていった。

私はインスタのDMを教えただけである。もっと言えば、インスタという超超超脚色された大嘘キラキラSNSのIDを教えたに過ぎない。インスタの私は、私であって私ではない。勘違いするな、お前に心を許した覚えはない。
電話しようと言われたが、電話は好きではないということは事前に伝えていたはずだし、何故そこまで電話にこだわりたいのかよく分からない。結局、インスタの不具合なのか私の操作が間違っていたのか電話は出来なかったのだが、私からすれば結果オーライである。
写真も見せて欲しいと言われた。写真なんて、マッチングアプリに腐るほど載せているのでそれを見てくれよ。会う時に分かるようにって、人混みの中で会ったことない人の写真なんてあってもアテにならねぇだろ。しつこかったので写真は見せた。
文面もイカれている。いや別にイカれているというか、なんかこう、なんだろう。その口の利き方はなんだ?と思ってしまった。話し方が乱暴だったとかでは無い。ただ、全てをこちらに委ねてくるような、こちらが好きと言わなきゃならないような、自分の意思でそうしているくせにあくまで私の意思ということにしたいような、誘導のような物言いが気に入らなかった。

とはいえ、人というのは会わなければ分からないものだ。一先ず、一度会って食事でもしようということになった。

今更だが、コマバさんとマッチすることになったきっかけについてちょっとだけ触れておこう。私は身長170cm以上は一切検討に入れないことにしているのだが、コマバさんは身長が170cmに達していなかった。それ自体に差別的な意図は無く単に私の好みの問題であるのだが、ではなぜそんなコマバさんが私の検討対象になったかと言うと、結論は至ってシンプルである。

小学校から高校までずっと頭から離れなかった好きな人にそっくりだった。

まじのまじに、それだけである。コマバさんの写真を見たときに、心臓がビクッと跳ねてしまった。私はな、一途なんだよ。迷いに迷った末に、会うだけでも……と、とりあえずいいねを返してしまった。

というわけで、食事だ。実際に顔を見て思ったのだが、いやぁ似てないな。好きだった人に。全然、似てないや。その時点でテンションはマイナスである。だんだん、タメ口で話されるのも腹が立つようになってきた。こいつはもうダメだ。さっさと帰りたい。

飯屋到着。雰囲気いい感じのちょっと高そうなお店。私は高い店が苦手だ。またテンションが下がっていく。ここでテンションを下げるのは、お店選びを任せた私にも責任があるわけだし、いいお店を選ぼうとしてくれた相手に失礼である。それくらいは分かっている。それはそれとして、テンションは下がり続けていく。

ここからが大問題だ。私は飯に関してはかなりやかましい。味に、ではなく、マナーにだ。マナーとは決してテーブルマナーではない。それで言えば私のテーブルマナーはおそらく壊滅的だろう。だから高いお店は極力避けて生きている。ずっとファミレスで嘘か誠かのテーブルマナーでも練習していれば、それでいいと思っている。
私はハンバーガーを頼み、コマバさんはキノコのカルパッチョを頼んだ。このキノコのカルパッチョが本当に美味しくなさそうだった。実際に美味しくなかったらしく、コマバさんは全く手をつけなくなった。頼んだ以上は最後まで食べるのが頼んだ者の責任ではないか?という疑問がまず1つ。
気にしいの私は、多分食べきれないから協力してくれないかと自分の頼んだハンバーガーとポテトをテーブルの中間地点に移動させた。コマバさんは遠慮なく食べ進めていく。まぁ、それはいいだろう。食べきれなさそうなのは事実なので、食べるのを手伝ってくれるのはありがたい。それにしても食べ過ぎだと思うけど。あと食べるならちょいちょいそのキノコのやつも食べないとさ、まさか全部残す気?自分のは全く食べず、私のを遠慮なくバクバク食べ進めていく姿にドン引きしたので2つ。

コマバさんはキノコのカルパッチョをほとんど手をつけないまま残してしまった。大変不愉快である。料理の写真がメニュー表に載ってないお店だったし、食べ物は美味しいものを美味しくいただくのが1番だとも思うので、残したことも私のハンバーガーを半分くらい食べられたことも、許せないことはないのだ。ギリギリだが。私が1番許せなかったのは、お会計で当たり前に自分の分は自分で支払わされたことである。正確には、自分のが美味しくなかったなら追加注文すればいいのに、ケチって追加注文もせず私のを貰って満足して礼のひとつも言えないことが許せなかった。プライドが高い人なんだろう。この人と今後付き合ったとして、建設的な話し合いができるとは思えない。

補足しておくが、女だから奢られて当たり前だと思ったことは、これまでの人生でただの一度もない。たとえ大富豪が相手だったとしても、自分の食べた分を自分で支払うのは当然だと思っているし、自分の食べた分のお金を払うのはむしろ女に与えられた新たな権利とさえ思う。持たざる者はどう足掻いても支払えない。女が奢られて当然だった時代は、女が男を飾る華で商品で道具だった時代の話だ。今の時代の奢られて当たり前だと言う女のマインドの根底には、自身を商品化して切り売りし、生存力の高い男性の周りを飛び回ることで己の価値を決めようとするところがあるように思う。先人たちは、男が勝手に決めた女の価値や評価基準から逃れるために必死に働く術を身につけてきたのに、今の時代でも声高らかに奢られようとするのは、なんだか一周まわって可哀想だ。そんなことしなくたって、お前は十分価値があるのに。

話が少しそれてきたが、とにかく今回に関しては奢ってくれとは言わないまでも、私の分までちょっとくらい多く支払ってくれても良かったんじゃないだろうかと思うわけだ。お金がなかったのかもしれない。事情や心情は正確には分からないが、少なくとも私ならお金がなかったとしても多く支払う意思くらいは見せる。支払えないならせめて、「半分くれてありがとう!助かった!」と全力で感謝を述べる。いや、コマバさんさ、ありがとうも言えないのかよ。別に自慢をされたわけでも、能力的に何か圧倒的上位だと感じたわけでもないが、終始プライドの高さを感じる人だった。私のハンバーガーを食べたことに感謝や謝罪を述べると、自分自身が失敗したことを認めることになるし私に助けられたことになるので言えない。言えないし、多く支払っても同じように負けを認めることになるから払えない。そういう思考が透けて見えた。多分、本人は気づいてない。

このあとも色々あったのだがコマバさんで尺を取りすぎているので、そろそろ終わりたい。コマバさん、本当に嫌すぎて未だに色々覚えてる。ざっと残りのエピソードを記しておこう。
・初対面で異様に同棲を求めてくる
(同棲したい派だがお前とじゃない)
・同棲の理由は家事をやって欲しいから
(私は仕事を続けている前提である)
・その日買った香水を私の体につけようとする
(好きじゃない匂いだったので嫌だった)
・解散前後、気をつけての一言も無し
(常識である。私は友達にも恋人にもする)
・抱き枕にして寝たいなどとセクハラ発言
(そういうのは付き合ってから言うべきだろ)
と、そんなこんなで私の方からインスタをブロックした。こちらが努力しないと会話が上手く続かないし、その会話もずっと中身がなく気持ち悪いふわふわした話をされて、ずっと不愉快だった。とにかく不愉快だった。コマバさんはきっとこれから先も、必要な場面でプライドを捨てられるようになるまでは恋愛できないと思う。

さて、話が長くなってしまった。まだもう二人ほど男性と会っているので、次回もおそらく人間関係の作り方と題し、話を続けることになりそうだ。ちょうどいいので、9月は人間関係の作り方シリーズということにしておこう。

しかしいるところにはいるものだな、変な男。これまでも沢山イカれた男と出会ってきたが、大人になって人の行動と内面がうまく結びつくようになってからは特に、あぁきっとこの人はこういう価値観の人で、根っこの部分ではこんな風に女を見下しているのだろうとか、簡単に想像できるようになったのは、かなり悲しいことだ。否、事実確認はしていない想像の話であるから、悲しむのはお門違いで、全ては私の罪深くも美しい豊かな想像力のせいである。

さて、珍しく長く喋ったら日本語もまともに話せなくなってきた。ここらでお暇しておこう。

それではまた次週。

ティーナ

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