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中見くんへ。(「君は放課後インソムニア」)


※この記事の内容は、漫画「君は放課後インソムニア」2巻のネタバレを含みます。


いつかの私が、君に手紙を書くとしたら。



中見くんへ



初めまして。


私は眠るのが下手な、地方に住む社会人です。

中見くんと違って、不眠症ではないのだけれど
毎日なかなか寝付けなくて

平日は睡眠時間が足りなくて、会議の時に船を漕いでしまうし
休日は午前中に起きた試しがありません。

ここにはちょっと書けないような
最低最悪なことも起こしてしまいました。

眠れないことが原因で。



それはこれからもずっと、一生、反省していきます。



眠れなかったり、起きれなかったりする度に
私は自分のことが嫌いになって
どうして大多数の人ができることが、自分にはできないんだろう、と
自暴自棄になったりしています。



中学生くらいの頃から、ずっと悩んでるんだ。


子供の頃から、ずっとずっと、私のコンプレックスです。


大多数の人が、とさっき書いたのだけれど

眠ったり起きたりするのが下手なことや
それで悩んでいることは、大体の人には上手く伝わりません。

だから中見くん、君があの時
先生に対して馬鹿野郎って言ったのを見て

私は、「あぁ、同じだ」って思いました。



昼間に体を動かせば、疲れて自然と眠くなる
健全な人間なら、夜はちゃんと眠れる
そうじゃないのは変なんだ


って、先生は言いましたね。



私も似たようなことを散々言われてきました。
なんの悪意もなく。寧ろ善意で。


早めにベッドに入って、目を瞑ればいいとか
お風呂に入って、温まってとか
眠れなくても横になってれば休めるとか
ホットミルクがおすすめだとか


その度にね、「あーぁ」って思ってた。

こんなことで、この人に苛つきたくないのになって。


それで眠れたら苦労しなくってさ
それで眠れたら、何年も悩んでなくってさ

それでも眠れないから苦しんでいるのにね。

こんな自分はおかしくって、だからどうにかしたくって
それでも眠れないから、もがいているのにね。


反吐が出る


とは、ああいう時の気持ちなのかも知れない。


私は、私にそういう風に言ってきた人たちを
今でもちょっと恨んでしまっています。

そして、同時に
私もこうやって無意識に色んな人を傷つけてきてしまったんだろうなと、絶望しています。


良かれと思って、眠って欲しいと思って
もしくは、“正しい”と思って、彼らは言ってくれています。


運動して疲れたら自然と眠れる
それが、自然なことで
だからそれが正しいと思って、先生は言ったんだと思います。



でも、そうなりたくてもなれなくて、出来ないから
そういう事を言われると、いたたまれなくなってしまうよね。


中見くん、


私は不眠症じゃないけれど、寝付けないことが日常だから、馬鹿野郎って言った君の気持ちが痛いほど分かってしまいました。

あの時の君の姿に、泣いてしまいました。


おんなじだ、って思ったから。

中見くんは、私みたいに周りの人を恨んだりはしていないと思うけれど
馬鹿野郎って言った時の中見くんの気持ちの、根っこの部分は同じなんじゃないかなって思うんです。



中見くん、ありがとう、馬鹿野郎って言ってくれて。
あの後、先生にまた怒られたりしたのでしょうか。


中見くんは、思わず直情的に啖呵を切ってしまったこと、後悔してるかも知れないけれど
私は、嬉しかったです。

そうだよね、って思えて、とても嬉しかった。


いつか、ゆっくり眠れるようになるといいね。

中見くんも、いさきちゃんも、健やかに過ごせるように願っています。


かしこ。

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