明確ではない理由
先日、担当した70代の方に
「面会に来た友達がプレゼントしてくれたこれ(18色入り水性ペン)箱に入れておきたいんだけど、ちょうどいい空き箱ないか?」と言われ探して持って行った。
後日部屋に伺った時、
その箱の中に何か描かれた紙が入っていたのでちらっと見ると、
見覚えのある山、見覚えのある橋、見覚えのある川、見覚えのある河川敷、、
「Aさん、これって」
「うん、そうだよ〜」
「私ここ好きなんですよ!」
「前働いてたって言ってたもんな、俺も若い頃働いててさ。思い出して懐かしくなってさ。携帯で画像探して真似して描いてみた。」
本当に上手で、水性ペンではなく絵の具で描いたような色彩だった。
この橋とこの山がこの角度で見えるのはこの橋を通った時で、
もう一つ向こうの橋に行くとここがこう見えて、
この橋渡って街に行ってさらに奥に行くと公園があって
話している最中、私たちは終始同じ景色を頭に浮かばせることができていたと思う。
正直私地元より好きなんですよ。
と言ったら、
あそこは何でかわからないけど良いんだよな。
生まれじゃないのに行くとホッとするんだよな。と。
不思議ですよね〜なんて話しながらまたふたりでその絵を見て、
こんなに年代が違っても、街が進化しても
感じるものが同じということに嬉しくなった。
こんな身体じゃなかったらもっといろんなことをやりたかった。興味があることがたくさんあった。もう終わりかと思うと悔しい。
と話す目からは微かに強いものを感じた。
今度私にその人の担当が回ってきたら、
いつもの薬を渡すのに加えて
今の街の風景をお届けするのもひとつかなと思っている。
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