綺麗な感情だけ

許せない、なんて感情は全部嫉妬からくるものだと思っていた。

本当は自分が喉から手が飛び出るほど欲しいものを、あいつが代わりに持っている。
そんな事実がただただ羨ましい。いや、実際は、羨ましいなんて透き通った感情ではなくて、自分でもなんとも形容しがたい不気味な色をした妬ましさ。

そして、そんな汚い感情を持つ自分にまた自己嫌悪を覚える。
もっと綺麗な感情だけにまみれて生きていたいのに。
ただでさえ遠くに見える自分の理想像を前にして、一歩また一歩と後ずさりをしている。

よく、他人と比べるな、とか聞く。
そう思う。
思うけど、無理だと最近は感じる。

だって、いつの間にか人との違いによって自分を定義するようになっていたから。
残念ながら、他人が一人もいなかったら、自分は自分たり得ない。
他者との差分を元に自分が自分であると言い張っている、いつからかそんな滑稽な状態になっている。
これもまた理想とは正反対な生き方だ。

最近なんて、もう自分でも心のどこかで自身の醜さに気づいているのか知らないけど、夢で悪魔みたいな風貌のよくわからないナニカに指摘されたりする。

「お前の望みはなんだ」とそいつが聞くから、「幸せになりたいんです」と自分は答えた。
そしたら、「それはお前の本心じゃない」なんて言うから、ムキになってそんなことないだろって食ってかかったら、そいつは笑ってこう言った。

「お前の本当の願いは、お前以外の誰も幸せにならないことだろ」

夢なのに強烈に覚えている。
彼の言葉を否定したいけど、どうしても否定しきれない自分がいる。
誰かとの比較を基準に生きている自分は、自分の幸せでさえ一人では定義できない。

いつまで、何歳までこんな面倒なことを考えて生きていけばいいんだろう。

ああ、この文章だって、すごく嫌だ。
あいつならもっと整理された自分の思考を、どこか品のある表現で、素敵に綴るんだろうな。

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