何を見せられてんの?は言わない約束。
以前おばはんずラブを思案しました。
私の妄想に付き合わされている豪華メンバーの中でも特にキャラがしっくりきて魅力的だったのが吉田課長です。
・職場の上司(吉田課長)
仕事が出来て情に厚い頼れる上司。私を落とそうと狙ってるらしく普段からボディタッチ多め。やたらと飲みに誘ってくる。
実は実は!!!この吉田課長と私、別展開で進展があったんです!!!!!
(やかましい。)
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とある日の仕事終わりの夜...
「飲み過ぎですよ、吉田課長。」
誰よりも優秀でテキパキと仕事をこなし、いつだって強気の吉田課長が今は情けない姿を晒している。
今夜は吉田課長の家で宅飲み。吉田課長と私のふたりきりでの飲み会。
数ヶ月も前から入念に準備をし、成功を収める自信があった今日のプレゼンが上手くいかず、今夜の吉田課長は自棄飲みだ。
「今日はさ、つくづく私って仕事出来ないんだなーって思ったわ.....」
そしてぐすぐすと泣き始めた。
「吉田課長が仕事が出来ないんだったら私とかどうなっちゃうんですか。」
「仕事だけじゃなくてプライベートでは最近失恋したみたい。好きな人に恋人が居るっぽい事を知ってさぁ、もう最近何もかも上手くいかない。」
「その好きな人には告白したんですか?で、恋人が居るとでも言われたんですか?」
「告白はしてないけど...その人最近左手の薬指に指輪をしてるんだぁ...」と悲しそうに俯く。
ギクッとした。
最近の私は恋人とお揃いで買った指輪を左手の薬指につけていた。
でもそれだけで吉田課長の好きな人が私だと決まったわけではない。
そもそも勘違いだったら恥ずかしいし戯言は軽くあしらう事として努めて明るく言い放った。
「吉田課長は綺麗なんだからもっとアピールしたらいいんですよ。」
「アピール?」机に突っ伏していた吉田課長が顔を上げた。
「吉田課長に社内の男性達もみんな憧れてますよ。だからその好きな人とも実は両想いって事もあるかもしれないじゃないですか。」
吉田課長は呆れたように溜息をついた。そしてまた焼酎を大きく煽った。
そして突然「あーぁ!今夜は酔っ払っちゃったー!」とか何とか言いながら立ち上がろうとしてそのままふわっとよろめいた。
咄嗟に支えようとするも、肝心の吉田課長は私の腕の中にすとんと収まり抱き着いた形で座り込んでしまった。
「ほら、飲み過ぎですって、課長。大丈夫ですか。」
吉田課長は私にきつく抱き着いたままで離れようとしない。
「..........」
静寂が続く。
ドキドキが相手に伝わるんじゃないかと思う時間。
それでも私は吉田課長の細い腕や肩や背中に伸びた手を払う事はしなかった。冷静を装いつつも抱き入れてしまっていた。
そのままどれぐらいの時間が経過したのか。
腕の中の吉田課長がやっと言葉を発した。
溜息交じりの小さい呟き。
「だから…アピールしてるの…」
「ど、どういう事ですか。」
「だから…今…好きな人に全力でアピールしてるの…」
その声は上手く聞き取れなかった。
…というよりは聞こえてはいたけれど自分の耳を疑った。
もしかしたらと思ってはいたけれど、やっぱりこの人の好きな人とはこの私なのだろうか。
吉田課長の顔を見ようとすると彼女はフイッと顔を背けてしまった。
「吉田課長、顔を見せて下さい。」
「嫌だ…恥ずかしい…」
「こっちを向いて下さい。」
「嫌だってば…」
吉田課長は頑なに顔を見せようとしない。でも真っ赤に火照った耳が丸見えだった。きっと顔も同じ位に真っ赤なのだ。
「私の事、そんなに好きだったんですか?」
吉田課長はどこか悔しそうな表情を浮かべて言う。
「悪い?いけないの?」
私は両手首を掴まれそのまま床に押し倒される。
「ねぇ、女性であり部下のあなたを好きになってはいけないの?」
私の上司である前にひとりの女性である目の前のこの人が何だか急に切なく思えた。
「課長の気持ち、凄く嬉しいです。今まで気付かなくてごめんなさい。」
年下の女の子を宥めるように言葉を発する。
「許さない。」
吉田課長は拗ねたように言った。その姿が可愛くて思わず笑ってしまう。
「許して。何でもしていいですから、ね。」
そう言った瞬間ゆらりと上体を起こした吉田課長は私の上に馬乗りになり見下ろして言う。
「何でもしていいって言ったね?」
勝ち誇ったように少しだけ笑う。
その瞬間、私は全部を悟った。
あぁ今日の日の展開全てが実は吉田課長の手のひらの上だったのだと。
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