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病気が教えてくれたこと

私は病気を患ったことがある。

「た」「ことがある」ではなく、今もたまに苦しんでいるかもしれない。

病気はとても辛かった。それは、よく聞く言葉の通り『死ぬほど辛かった』。本当に、そのものである。

あの病にもう一度なりたいか?と言われればもちろん「NO」だし、もう一度なれるか?と聞かれれば「絶対にムリ」だと即答すると思う。その位、私は苦しかったし色んなものを諦めたし、悲しい思いもたくさん沢山してきた。


最近、新聞で「しぶたね」というNPO法人を知った。しぶたねは、心臓病や難病などを患った子供の兄弟を支援する団体だ。代表の方がご自身の経験から、設立された団体なのだと書いてあった。

私は今、コロナの影響で放送延期となったドラマの代わりに再放送された木曜ドラマ「グッドドクター」を観ている。山崎賢人さんが先天性の自閉症を持つ医師を演じ、その先輩や上司に上野樹里さん、藤木直人さんなど豪華俳優陣ばかりが集まったとても心温まる医療ドラマだ。

今日の回は、まさに、「大病を患う弟と、弟に付きっきりの両親への不満や寂しさを抱える兄」のお話。

まだ幼い弟は、外に出たくても、友達と遊びたくても、おかあさんやおとうさん、おにいちゃんと一緒にいたくても、いろんなことを我慢している、まだ我慢を覚えるには早すぎる子だ。それはお兄ちゃんも同じで、難易度の高い手術の執刀ができる高山(藤木直人)がいる病院を見つけた母親の意志に連れられ大好きな友達のいる長野の学校から遠くの学校に転校をしてきた。友達とは離れ、家では我慢の日々。たくさんの寂しさと不満を抱えながら、どこにもぶつけられない思いと独り闘っている、まだあどけない青年だ。

私は今回の回を見ていて、「陽翔(弟)は、こんな気持ちなのかなぁ」とまざまざと、そしてとてもリアルに、想像することができた。

もちろん、その人の苦しみや悲しみ、辛さや、経験してきた踏ん張りや越えてきた壁の数々は、寄り添おうとすることはできても真に理解し、全く同じ気持ちを共有することは、どんなに同じ体験をしていようが、どれだけ親い人だろうが、100%は無理だと思っている。だから、「分かった」なんてことは、安易には言えないし、想像した自分が「私は、あの子の気持ちがわかった。」「〇〇(理解、想像)することができた!」なんて得意げに言うことなんてもちろんできない。

ただ、したくてもできないことを悔しい気持ちを噛み締めながら、泣きながら諦めた時の悔しさや悲しさのあの何とも言えない感覚は想像することができるし、青い空を眺めながら、「あの空の下で、ぼくも友達とめいいっぱいかけっこをしたいなぁ」と思う気持ちも、そう思いながらも「でもぼくはできない」「みんな、いいなぁ」「ぼくも、おそと、行きたいなぁ」と切なさを感じた時の空の青さなら、どんなものだったのか想像ができる。胸が締め付けられるような、キューーーッと苦しく、切なくなるような胸の痛み。そういう痛みを、私は病気に教わった。だからあえて、想像することが「できた」と私は書いた。

きっと、これまでの私なら「切ない。悲しい。」とドラマそのもののストーリーに感情移入をし作品そのものとしてドラマを鑑賞することはできても、幼いながらも多くのことを我慢しなければならず、そんな状態の中でも周囲を思いやる陽翔自身の胸の内の悲しみや切なさや優しさだったり、兄の翔太が抱える孤独や吐き出せない感情にここまで心を寄せることはできなかったかもしれない。こんなにも自分ごととして、同じ目線で陽翔や周りの人の感情の揺れに、感情を寄せることはできなかったかもしれない。

そう思うと、病気は私に多くのことを教えてくれたのだと、またひとつこのドラマを通じて気付かせてもらえた。

兄に怒鳴られ、泣く陽翔の背中をさすり「いっぱい泣きましょう。たくさん泣くと、脳の・・・」とホルモンの話まで持ち出し、「泣くこと」そのものを認め、受け止め、受け入れて包む湊(山崎賢人)の深い優しさはきっと、辛い思いをたくさんしてきたからこそのものなのだろう。と、勝手に妄想を巡らせた。


恥ずかしながらこれまで、病気の兄弟を持った子が、幼ながらに苦しく寂しい思いをしていて、その子たちがどれだけ苦しい思いをしているのかを私は知らなかった。しぶたねの記事を読み、私は食い入るように文章に目を通した。

そんな折、奇しくもドラマでこのテーマが挙げられた。


自閉症を持つ湊。
そして、大病を患う弟・陽翔。
弟中心の生活に複雑な思いを抱えながらも、ちゃんと、陽翔を想えている翔太。

私が上のような「優しさ」を持ち併せた人間になれているかどうかは分からない。

でも。

少なくとも、ひとつのドラマを色んな角度から観て、思いを巡らせられるだけの経験値は得た。

念の為もう一度書くけれど、私は今もこれからも、進んで二度同じ病気になりたいとは思っていない。けれど、病気は確実に、私の人生を豊かにしてくれた。


「病気が教えてくれたもの」は失ったものよりも遥かに多い。


マイナスな出来事や経験も、そればかりではないと感じさせられる。

苦しみや切なさ、同世代よりも何十倍も辛い思いをしてきた経験は、
いつか自分の実となり力となり強さになる。
今ではそう信じてます。

#病気が教えてくれたこと #グッドドクター #新堂湊  #しぶたね 

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