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物覚えの悪い役員が語る会社の内情

管理部門を担当する役員です。

とある金曜日、出張先での移動の車中、社長から3つほど業務指示がありました。
「承知しました」と爽やかに応じたものの、翌日になると、3つ目が
どうしても思い出せません・・・。これは・・・ヤバい・・・。
最近、もの覚えが一段と悪くなり、基本的にメモするのが習慣となっているのですが、
今回は「3つなら覚えられる」と思って高をくくったのがアダとなり・・・。
土曜・日曜と記憶の掘り起こしに呻吟しましたが、ちから及ばず断念せざるを得ませんでした。

そもそも会社でトップを張る様な人は、恐ろしく記憶力が良いのです。
困ったことに全部覚えていて、「あれはどうなった?」と聞かれます。

「一度に2つしか覚えられないのか?」
という叱責を覚悟で、先手を打って白状するしかないと意を決し、月曜日、
「社長、申し訳ありません。3つ目のご指示が思い出せません。」
これに対し社長は、
「ああ、思いついたこと、いろいろ言ってるからなあ。取り敢えずいい。
思い出したらまた言う。」

物覚えの悪い役員は、
「・・・・・・・」

あくなき探求心の先には

しかしこの飽くなき探求心から次々に生まれるこれらのアイデアは、
(時に発想が壮大過ぎて、部下は右往左往することもあるのですが、)
熟成し、やがて絞り込まれ、実行段階に入っていきます。

「規模の小さい会社なんだから当社には無理」、「人が足りないから手が出せない」
等、トライする前から諦めるのは当然ながら全くもってNGです。求められるのは、
「もっと勉強せよ。アイデアを出せ。やれる方法を死ぬ気で考えよ。
社長の考えている上を行け。」

この「上を行け」は途方もなく難しい訳で、七転八倒することになります。
また、部下に対して何かを求める時に、程々のところに目標線を引くのはご法度です。それは部下に対して「失礼だ」と。そこに可能性があるのに何故要求しないのか?

変わり始める予感

一度の指示では変わらなくとも、繰り返されると変わり始めます。
高い目標を前にして、最初は「それは無理!」と思っていた社員の中にも、
「なんとか考えてみようか」と、自ら試行錯誤を始める者が出てきます。

思えば、以前は「待ちの姿勢の業界3位」で、まじめに地道に鋳鉄管を
製造する(だけの)会社でした。一昔前はそれでも何とかなっていたんです。
社会に不可欠の水道インフラ事業の一翼を担うことに満足し、特に変化を
求めない社風だったと思います。と言うか、まさしくそうでした。
くだんのホームページに象徴される様に。

今、その地道なまじめさが、変化を生み出すことに振り向けられる様に
なってきたのです。そして、いくつものプロジェクトが、社内で進んでいます。

両利きの経営のように

当社では、東洋経済から出ている「両利きの経営」が経営に近い社員の必読書となっています。既存の事業をしっかり守りつつ、いかに新たな展開を模索し、成長し続けていくか。まさに今の当社に必要なことが、実例の分析に
則って指南されています。今、強く求められているのは、社員ひとり一人が
良く勉強し、明日、今日より成長していることです。物覚えの悪い役員も、
頑張らねばなりません。

「社風は簡単には変わらない」とよく言われますし、そう思っていましたが、変わるものなんですね。しかもたったの2~3年で。私は最近、特にそう実感しています。

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