外国語書面出願(36条の2)と先願参照出願(38条の3)

弁理士試験ではどちらも特殊な出願として出題されがちな①外国語書面出願と、②先願参照出願がある。

どちらも国際法に合わせた制度のになっているが、
片や①はパリ条約、②はPLTと違う条約が根拠になっていたりする。

外国語書面出願(36条の2)は以下である

特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。

特許法36条の2

ここでいう経済産業省令で定める外国語は英語となっている。中国からの出願の増える今、中国語などに対応してもよいんじゃないかとも思ったりはする
この条文の意義は、パリ条約が関係している。

パリ条約による優先権の主張ができる期 間が満了する直前に特許出願をせざるを得ない場合は、短期間に翻訳文を作成 する必要が生じる。また、願書に最初に添付した明細書等に記載されていない 事項を補正により追加することは認められないため、第一国出願を日本語に翻 訳して特許出願した場合は、外国語を日本語に翻訳する過程で誤訳があったと きに外国語による記載内容をもとにその誤訳を訂正することができないなど、 発明の適切な保護が図れない場合がある。

審査基準 第 VII 部 第 1 章 外国語書面出願制度の概要

パリ条約の優先権は最先の出願日から1年以内に諸国の特許庁に現地語で出願する必要がある。
その翻訳作業は大変であり、一年という短期間は酷である。また短期間で翻訳すると原文を誤訳してしまったりして不利益が大きい。
こういった事情を回避できるように、ひとまず英語での明細書提出を許した、というのがこの条文の意義となっている。
38の3と大きく異なるのは、分割、出願変更、などの出願にも適用できる点にある。

特許を受けようとする者は、外国語書面出願をする場合を除き、第三十六条第二項の規定にかかわらず、願書に明細書及び必要な図面を添付することなく、その者がした特許出願(外国においてしたものを含む。以下この条において「先の特許出願」という。)を参照すべき旨を主張する方法により、特許出願をすることができる。ただし、その特許出願が前条第一項第一号又は第二号に該当する場合は、この限りでない。

特許法38条の3

こちらは外国語書面出願、分割、出願変更などの出願には適用できない。
このような条文が設けられたのは、
PLT条約が根拠になっている

自国の官庁が認める言語で出願の時に行われた先にされた出願の引用は、規則に定める要件に従うこ ととする。 とを条件として、前者の出願に係る出願日の設定のために、当該出願の明細書及び図面に代わるものとする。

PLT5条(7)

この条文が根拠らしい。そもそも引用する意味が分からなかったが、このような記載もあった。

①下記の3つの要素を官庁が受理した日を、出願日とする(第5条(1))。(i)出願であるという明示的又は黙示的な表示
(ii)出願人の同一性が確認できる表示又は連絡がとれる表示
(iii)明細書であると外見上認められる部分(※1)

※1:クレームがなくても出願日は付与される。

https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/wipo/plt_120620.html

恐らくこの※1クレームがなくても出願日は付与される。のでクレームだけを変えて出願する時に手続きが簡易化されることを狙ったものと思われる。


実際問題、実務ではどの程度この先願参照出願(38の2)が使用されているのか、甚だ疑問であると思うところ。。
明細書執筆の手間は減りますが、これだったら出願日の遡及効が得られる分割(44条)でよいのではとも感じる。

ちなみに、

ということらしく、もっともらしい使い方はないのかも?






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