『どんまい』
重松清著。いままでお堅い評論や新書ばかり読んでいたため、小説も読みたくなり、自分の少ない知識のなかでも、ギリギリ知っていた重松清の著書を選んだ。
重松の小説はどこか救いがあるーそんなネットの評価を頼みに、物語を読み進めた。大まかには、人生において様々な"つまづき"を経験した人たちが草野球を通じて交流していくことで、前向きに今後の人生を歩んでいこうと思えるようになっていく話であった。
離婚、介護、いじめ、妬みややっかみ、挫折、会社でのしがらみなど、悩みの種は人それぞれであり、みな内心ぐちゃぐちゃな気持ちを抱えていた。筆者の心情描写がとても上手で、思わず強く感情移入してしまい、自分もなかなか苦しい気持ちになった。
それぞれ違った事情を抱えていたが、草野球を通じてすこしづつ変化がおこり、物語の最後では、草野球が解散して今後の人生を前向きに送っていこうと各人が思うにいたっている。
あえてここで述べておくが、各人が悩んでいたことを完全に克服していくようなサクセスストーリーではまったくなかった。抱えている悩みがいい方に進んだ人もいれば、なんの変化もなかった人もいた。彼らの現実にはまだまだ立ち向かうべきことが多くあるだろうと思った。しかしながら、「どんまい」と、失敗を流して、次に挑もうというこころ意義を感じた。
人生はそうそううまくいかないものだ。
そう思うことは多々ある。まだ人生20年ほどしか過ごしていないが"失敗"したなあと思い返すことは枚挙にいとまがない。たとえ失敗しても自分に「どんまい」と言って励ましていけばいいんだ、絶望しきることはないんだよと読者に訴えかけているかのように感じられてとてもあたたかい気持ちになった。
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